「更年期で一番つらい時期」はいつ? 「やる気が出ない」はいつまで続く? 専門医が回答
更年期で一番つらい時期はいつなのか、閉経前に症状が強くなるのかと、不安に感じている人も多いのではないでしょうか。更年期は計10年間と期間が長く、メンタルへの影響も大きいことから、誰にも言えずに思い悩んでいる人もいます。更年期についての疑問や悩みに対して、前回に続き、産業医で産婦人科医でもあるイーク表参道副院長の高尾美穂さんが答えます。
更年期で一番つらい時期はいつ? 山場の目安は「閉経前2年・後1年」
更年期で一番つらい時期はいつ頃なのか、心構えのため知っておきたいです。
計10年間の更年期のうち、一般的には、「閉経の前2年・後1年程度」の計3〜4年間が、症状が最も強く出る時期とされています。ただ、「閉経の2年前」を事前に知るのは難しいですよね。そこで目安になるのが生理周期です。生理の間隔が60日以上空くようになってきたら、その後1〜3年のうちに閉経を迎えることが多く、そのタイミングと「つらい時期」は重なりやすいと考えられています。そのため「生理の間隔がだんだん空いてきたな」と感じたら、それから3年ほどの間がつらくなりやすい時期とイメージしておくといいと思います。
その時期を抜ければ、女性ホルモンの分泌は低値で安定するので、ホルモンのゆらぎによる不調は落ち着いていきます。ただ一方で、女性ホルモンが減ることで骨や血管などに影響が出る場合があるほか、性格的な傾向や睡眠不足、職場環境、働き方、家族の問題などの環境因子による影響は一気になくなるわけでもありません。ですから、ホルモンによる体のゆらぎは落ち着いても、周囲の環境や悩みが変わらないのであれば、つらさは完全になくならないかもしれません。体の問題で生じる山場は越えても、生活や環境からの積み重ねられた負担については、並行して見直していく必要があるのです。
更年期で記憶が飛ぶ? 物忘れは更年期症状? 認知症との違いを解説
私は最近、更年期のせいか忘れっぽくなったのですが、もしかすると認知症ではという不安も感じています。見分け方はありますか?
まず「物忘れ」は、更年期症状としてはあまり一般的ではありません。40代頃から物忘れが目立ち始めることはありますが、それは女性ホルモンの変化による更年期症状ではなく、加齢によるものであることが多いです。
一方で、この年代から認知症のリスクについて意識するのは望ましいことだと思います。例えば睡眠時間が短いと、アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβが脳に蓄積されやすいことが分かっているので、睡眠などの生活習慣を見直すのは大切です。
物忘れと認知症の見分け方は、「覚えたこと自体を覚えているかどうか」です。認知症では、覚えたこと自体を覚えていません。例えば何か約束したことを、その内容だけではなく「約束した記憶そのものがない」というようなケースです。一方、「忘れっぽくなったな」と自覚できている場合は、「覚えたはずなのに思い出せない」という、加齢による一般的な物忘れの範囲であることが多いです。つまり、「最近忘れっぽくて……」と自分で気づいている時点で、認知症ではないと考えられます。もしどうしても心配だという場合は、MCI(軽度認知障害)検査を受けるという選択肢もあります。
更年期が終わったらどうなる? 閉経前後で違う症状とその後の変化
自分が更年期を迎えてみて、ホットフラッシュやイライラだけではなく、指の痛みやこわばり、肩こりや腰痛などなど、症状が次々に出てきて驚きました。これらの症状が、更年期が終わったらすべて無くなるのか(またはひどくなるのか)、更年期後がどうなるのか教えてください。
更年期症状の多くは、女性ホルモンの分泌が減り、その環境に脳や体が慣れるまでの間にあらわれます。その中で、ホルモン分泌が急減する閉経前(更年期の前半)は、ホットフラッシュや動悸などが起きやすくなります。これらは、女性ホルモンが減った環境に体が慣れれば、症状が治まっていきます。一方で、メンタルの不調、指関節の痛みなど、ホルモン自体の働きが失われることが関係する不調に関しては、その先も続く可能性を念頭に、対処することが望ましいでしょう。特に、指関節が変形してしまった場合は元には戻りません。
閉経後(更年期の後半)には、女性ホルモンの分泌がほぼなくなることによって出てくる不調や病気に気をつけなくてはいけません。代表的なものは、腟の乾燥やかゆみ・痛みや性交痛(GSM)、骨粗しょう症、脂質異常症や高血圧などの生活習慣病です。骨や血管に関わる病気は自覚症状がないまま症状が進行することもあるので、定期的に健康診断などでチェックすることが望ましいです。
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一方、更年期の症状には肩こりや腰痛も数えられていますが、筋肉の低下や疲労の蓄積、加齢によるものであることが多いので、これらの症状は「更年期が終わったから治る」というものではありません。
更年期でやる気が出ないのはいつまで? 無気力との向き合い方
更年期に入り、何もやる気が起こらない無気力状態になり困っています。仕事で新しいことに挑戦しようとか、手間のかかる料理をしようとか、そういう気力が一切起こりません。今思うと、私の母も若い頃は料理が好きで家を清潔に保っていたのに、更年期頃から料理の手を抜くようになり、家も片付けなくなってしまいました。今後の長い後半人生のため、何か改善策があれば知りたいです。
「改善策」ではなく、「手を抜いたっていい」と認めることも大切です。お母さんに対しても、「昔はできていたのに」と厳しい目を向けるのではなく、「それまでずっと家族のために料理を作り、家を整えてきてくれてありがとう」と考えてはいかがでしょうか。お母さんに厳しい人というのは、自身に対しても厳しいことが多いですが、これから年齢を重ねるにつれて、「できないこと」が増えていくので、そのたびに自分にダメ出しをしていると、どんどん苦しくなってしまいます。
更年期で「やる気が起こらない時期」に入っているのならば、無理に新しいことに挑戦したり、手の込んだ料理をしたりする必要はありません。いずれトンネルを抜けるように、少しずつ気持ちが上向く時期がまた来るはずなので、その日までは「現状維持で十分」と考えてほしいです。
調子が悪い日は、「サボっているのではなく、今はそういう時期」と自分で理解して、最低限やらなければならないことだけできていれば合格点、としましょう。今の時代、料理や家事の便利な道具やサービスもたくさんありますから、それらもどんどん活用して、それによってできた時間をやりたいことや、何もしない時間に当てればいいと思います。
- 本気で、意識して手を抜く
- 「これくらいで十分」と、自分と他人に対する合格点を下げる
こうした視点を持てるかどうかが、これからの長い人生をラクに生きられるかどうかの大きな分かれ目だと思います。
日本スポーツ協会公認スポーツドクター・産業医
東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て、2013年から現職。専門は女性のヘルスケア。ヨガの指導者資格も持ち、女性の心身をさまざまな角度からサポートする。
(※内容は2026年2月取材時点のものです)