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女性に必要な栄養素とは? 生理前に甘いものを食べたくなる理由、やせ過ぎ問題に専門家が回答【働く女性の健康相談室⑤】

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健康のためには栄養バランスのいい食事が大切だと分かっていても、仕事で忙しく1日の食事量や献立が偏ってしまったり、コンビニランチで何を選べばいいのか分からないなど、食事についての悩みは尽きません。また、年を重ねるにつれて変わる女性に必要な栄養素や食べ物、生理前に甘いものを食べたくなる理由、女性のやせ過ぎと健康の関係なども知りたいという声が多くあります。予防医療・栄養コンサルタント、一般社団法人ラブテリ代表の細川モモさんがこうした質問に答えます。

女性のやせ志向に注意! BMIが普通でも、やせるべきかを解説

相談者

私はBMIでは「普通」の上限ギリギリですが、洋服のサイズはLLサイズのため、職場では、「ほとんどの人がSからLの制服なのに」と陰口を言われています。私の体型は普通ではなく、やせるべきなのでしょうか?

細川モモさん

以前、NHKの報道番組でここ数十年の間にアパレル業界で起きている変化として、洋服のサイズ表記が、以前のSがMになり、以前のMがLになっていると報じられていました。このことから、次のようなことも考えられます。私たち自身の体型や体重そのものに変化はないのに、いつの間にか洋服のサイズが変わったため、「太った」と多くの女性が思い込んでしまい、普通体型の女性たちが以前のSを目指してダイエットに励むようになった側面もあるのではないか……。もちろん、洋服のサイズ変化だけが女性たちのダイエット志向を促している原因だとは言いませんが、こうした社会の事情も女性たちの意識に影響を与えているのではないかと思っています。

実際、私たちラブテリが体組成などの測定会を小学校などで行うと、「うちの子ぽっちゃりで」とおっしゃる親御さんがおられますが、測ってみると普通体型であることがほとんどです。こうしたことからも、日本女性の体型についての認識は、医学的根拠ではなく、「女性はやせているほうがよい」という思い込みや偏見に基づいている場合が多いように思います。

日本人の健診データを活用した研究(JPHC Study)では、最も健康に異常がないのはBMIが21~23の人で、BMIが低い人は死亡リスクが上昇する傾向にありました。ですから、あなたのBMIが普通の範囲内なのであれば、無理なダイエットをする必要はないのです

私たちは2025年の大阪・関西万博で、「日本女性はやせているほうがいいと思っている」という、日本人の体型へのアンコンシャス・バイアスの調査結果を展示したのですが、その際、参加した海外の人々から「国民の体型は社会の豊かさの象徴なのに、日本のような豊かな社会でやせた女性が増加するのはもったいない」というコメントがありました。BMIが普通というあなたのような体型は、社会が豊かである証、と捉えることもできると思います。

ただしBMIが普通であっても、体脂肪率については注意が必要です。体脂肪率が高すぎると、血糖値が上がりやすくなり、排卵障害や月経異常のリスクも高まります。体脂肪率は定期的にチェックするようにしてくださいね。

「将来、妊娠希望」の人は今から「やせ」にご注意。妊娠前の体格と生まれてくる子の健康に深い関係

生理前に甘いものを食べたくなる理由|メンタルにいい食べ方・悪い食べ方

相談者

生理前や生理中、また仕事のミスをしてしまったときなど、くよくよしやすい性格で、仕事中も自分へのご褒美として甘いものが手放せません。でも白砂糖はメンタルに良くないという話も聞きました。実際にはどうなのか、その他にもメンタルに悪影響があるもの、良い影響のある食材があれば知りたいです。

細川モモさん

甘いものを食べると、一時的に気分が落ち着いたり、緊張が和らいだりするように感じられますよね。これには、気分の安定に関わる脳内の神経伝達物質の「セロトニン」が関与していると考えられています。セロトニンの材料となるのは、必須アミノ酸のトリプトファンですが、糖質(甘いもの)を摂るとトリプトファンが脳に取り込まれやすくなり、“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンが作られやすくなるのです。ストレスが強いときほど甘いものが欲しくなるのは、こうした仕組みが背景にあると考えられています。

一方で、糖質を多く含む食品を頻繁に摂取すると、血糖値が急激に上下しやすくなり、気分の浮き沈みや集中力の乱れ、体脂肪の増加につながる可能性なども指摘されています。とはいえ、ストレスをただ我慢することも、心身の健康にとって望ましいとはいえません。

そこで、血糖値が急上昇しにくい食事の工夫をご紹介します。例えば甘味は、オリゴ糖やアガベシロップ、メープルシロップなどを少量活用するようにしてみてはいかがでしょう。また、白米は雑穀米に、食パンを胚芽パンにしたりするなど、食事全体のGI値(グリセミックインデックス=血糖値への影響を数値化した指標)を下げる工夫をしてみるのもいいでしょう。さらに、甘いものを食べた後に15分程度のウオーキングを行うなど、軽い運動を組み合わせることも、血糖値の急激な変動を和らげる助けになります。

メンタルの安定に効果があるとされる栄養素はいくつかありますが、おすすめは、青魚に豊富に含まれるDHAとEPAです(特にEPA)。例えば、メンタル不調の代表であるうつには“脳の炎症”が関わっているという知見があり、DHAとEPAには炎症を鎮める働きがあることが分かっているのです。実際に、日本人を対象にした研究では、妊娠初期〜産後にかけて魚の摂取量が多い人ほど、産後うつの発症リスクが低いことが報告されています。そのため、青魚を週1回以上、できれば3回食べることが理想です。その際、サバ缶などを活用するのもいいと思います。

食事以外の観点では、何でも相談できるメンタルヘルスの専門家を見つけることも、いい方法だと思います。米国では、精神疾患がなくてもこうした専門家をかかりつけに持ち、相談するのはごく一般的なこと。生きていればさまざまなことが起き、誰でも毎日ハッピーではいられません。必要な時に自分を励まし、鼓舞してくれ、時にありのままの弱音を吐ける存在は誰にでも必要ではないでしょうか。甘いものに変わる心のサポーターを見つけることは、長い人生で見ると有益だと思います。

女性に必要な栄養素を意識したデスクで食べるおすすめの1品

相談者

忙しくてきちんとしたランチが食べられなさそうなときに、何か1品だけデスクでつまむとしたら何がいいのでしょうか。バナナ? バランス栄養食? プロテインドリンク? おにぎり? サンドイッチ? サラダチキン? 野菜ジュース?

細川モモさん

忙しいと、どうしても食事については疎かになりがちですよね。ですから、「1日の食事量や栄養バランスをどう整えるか」で悩んでいる女性は多いと思います。実は、食事には「栄養をとる」以外に、ぜひ知っておいていただきたい、心身へのポジティブな効果があります。

  • 食事からとる水分が、一日に必要な水分の半量を補っている。この水分は、肌の乾燥、便秘、口臭対策にもなっている
  • 噛むことにより唾液の分泌が促進され、大脳を刺激し、アンチエイジング効果や脳のパフォーマンスアップが得られる
  • 食べ物を消化する時に発生する熱(食事誘発性熱産生)で体温が上昇するため、冷えや生理痛などの痛み対策として期待できる
  • セロトニンが増えることで、ストレス緩和効果がある

つまり食事には、最低でも一石四鳥の効果があるのです。女性に必要な栄養素を効率よく補うという意味でも、食事はとても重要です。忙しく働くからこそ、効率的なパフォーマンスアップ、そして美容の手段としても、ぜひ食事は重視していただきたいと思います。その上で、「どうしても難しいときに何を1品選ぶか」という質問については、「卵を含む製品」をおすすめしたいです。なぜなら、卵は完全栄養食と呼ばれるほど優秀な食材で、不足しがちな栄養素をほとんど含んでいるからです。

関連記事:不調を抱える女性従業員を減らす近道! 朝食欠食者を減らす。栄養おやつの提供も

年代別に変わる“女性に必要な栄養”と食べ物

相談者

女性の体質は変化していくと思うので、年代ごとに食べたほうがいい食材、避けたほうがいい食材を知りたいです。

細川モモさん

おっしゃる通り、女性は筋肉量や女性ホルモンが減るとともに体脂肪が増え、結果として生活習慣病のリスクが高まっていく傾向にあります。また、一般的に胃の消化力が衰えていく40代以降は、脂っぽい食事を控えたい人も増えます。食生活は加齢とともに、ある程度自然に変化すると覚えておくといいでしょう。
その上で、努力目標にしたいのが、「100歳まで動物性たんぱく質を食べられる体」と「自然閉経を早めない食事」の2つです。

日本人高齢者の健康状態と食生活を調査した研究(※1)で、100歳の時点で健康的な人とそうでない人では、肉・魚・乳製品などの動物性たんぱく質の摂取量に違いがありました。その要因として、動物性たんぱく質食品には体の機能を維持する上で必要不可欠な栄養が詰まっているだけでなく、噛む力も必要になることがあると考えられます

一般に、加齢で消化能力が低下すると、うどんなどの柔らかい食品(炭水化物など)を好む傾向になりますが、年をとっても健康的だった人は、噛み応えのある肉などの動物性たんぱく質をしっかり食べていたというわけです。

実際、サルコペニア・フレイルに関する栄養管理ガイドライン2025では、65歳以降は、一般成人に比べ、推奨されるたんぱく質量が増えます。一般成人では 1日に体重×0.8gですが 、65歳以上では1日に 体重×1.0~1.2gとなり、介護予防目的の場合は、さらに多くとることがすすめられています(体重×1.2~1.5g/日に大幅アップ)。だからこそ、女性が健康を維持するために必要な栄養素として、いくつになっても動物性たんぱく質を意識した食事は大切です(もちろん植物性たんぱく質とのバランスを考慮した上で)。

ただし動物性たんぱく質の中でも、飽和脂肪酸が多いバラ肉やひき肉、生クリーム、トランス脂肪酸が多い食品(ファストフードや唐揚げ・フィッシュフライなどの市販の揚げ物、カップ麺、ラクトアイス、ホイップクリームなど)については、生涯を通じて控えめにすることをおすすめします。これらの脂肪酸は、とり過ぎると動脈硬化や心筋梗塞など心血管疾患のリスクを高めるからです。

女性の自然閉経の時期には、炭水化物の質と、魚・豆類の摂取量が影響を与えているかもしれないという英国の研究(※2)があります。この研究では、若い頃から精製された炭水化物やジャンクフードを多くとっていた女性は、自然閉経の時期が早い傾向にあったことが報告されています。これに対し、魚や豆類などを多く食べてきた女性は、閉経が遅い傾向にありました。女性は閉経後に体脂肪が増加しやすくなり、生活習慣病にかかるリスクが高まるため、自然閉経の時期が早まることは好ましくはありません。白米や食パン、うどんなどの精製された炭水化物を、精製度の低い炭水化物(胚芽パン、雑穀米、蕎麦など)に替えて、動物性・植物性たんぱく質をバランスよく食べることは、さまざまな観点でメリットがあるといえます。

  • ※1日本食肉消費総合センター刊「高齢者の食生活を考える:サクセスフルエイジングのための理想の食生活とは」より
  • ※2J Epidemiol Community Health 2018 Aug;72(8):733-740.

コンビニランチの組み合わせと選び方|忙しい女性が栄養バランスを整えるコツ

相談者

バランスのいい食事を食べたくても、職場の周囲はランチ事情が悪く、あまり選択肢がありません。ランチ選びのコツ、コンビニの活用法、NG例を教えてください。

細川モモさん

ミス・ユニバースのオフィシャルトレーナー時代に、各都道府県代表の女性たちの食環境の悩みを聞き続けていた私の経験から言えることは、まず、食生活を毎日完璧に整える必要はない、ということです。アスリートやボディメイクのコンテストの優勝を目指しているわけでもない限り、「7:3」の感覚で、7割は健康を意識した食事、3割は好きなものを食べるというのが、私が編み出した法則です。

女性に必要な栄養素を意識した「ランチの選び方」で大切なのは、たんぱく質を不足させないこと。比較的どこにでもある蕎麦・うどん屋さんであれば、トッピングでも構わないので、たんぱく質の食材(肉・魚・卵・大豆・乳製品)を必ずとるようにしましょう。こうすれば、動物性たんぱく食材に一緒に含まれているミネラルも同時に摂取できます。逆に、麺類におにぎりやいなりずしを加えて「W炭水化物」にするのは、肥満のリスクが高まるため、運動習慣がない方は気をつけてほしいです。また、麺類のつゆやスープは塩分が多いので飲み過ぎないようにしましょう。

また、商品が豊富なコンビニは、栄養管理がしやすい側面があります。季節ごとにお弁当のラインナップなども変わるので、飽きにくいという点も魅力です。コンビニ栄養管理術のポイントとしては、主食がパスタやおにぎり、パンなどの場合、「ゆで卵」や「高たんぱく質ヨーグルト」などでたんぱく質をとることです。特に卵は優秀な食品で、多くの栄養素を摂取することができます。ただし食物繊維やビタミンCが少ないので、スムージーや野菜の副菜などを添えると完璧に近くなるでしょう。一方、揚げ物をよく食べるという人の場合は、たんぱく質よりも海藻サラダやひじき、切り干し大根などの副菜を加えてほしいです。

バランスのいい食事がとれないときは、鉄や亜鉛、食物繊維など女性が不足しやすい栄養素をおやつで補うという裏技も試してください。たんぱく質不足が気になる時は納豆スナック、ビタミン・ミネラル・食物繊維の不足が気になる時は高カカオのフルーツチョコレートなど、魅力的な商品はたくさんあるので、通販などで購入しておき、職場に持参するのもいいと思います。

もっと簡単な方法として、飲み物という手もあります。ココアは食物繊維や鉄・亜鉛を含み、甘酒は「飲む点滴」と言われるほど栄養価が高いので、不足しがちな栄養素を補ってくれる強い味方です。

また、職場でできることとしては、電子レンジがあれば冷凍弁当を解凍して食べることもできるでしょう。今は冷凍の宅配弁当もおいしくて栄養に配慮したものも増えているので活用してみてはいかがでしょう。福利厚生でヘルシーなオフィスコンビニを用意する企業もあるようです。ぜひ、従業員の食事に配慮した職場が増えて欲しいと願っています。

細川モモさん
一般社団法人ラブテリ代表理事、予防医療・栄養コンサルタント

両親の闘病をきっかけに予防医学の専門家を志し、International Nutrition Supplement Adviserの資格を取得。2009年、日米の専門家チーム「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を設立。2014年、三菱地所と共同で東京・丸の内に「まるのうち保健室」を立ち上げ、「働き女子1,000人白書」を発表。12都道府県で女性のための保健室事業を展開し、不定愁訴や不妊の予防・改善に精力的に取り組む。日本初となる生理・PMSビッグデータ構築に取り組み、「Nature」の姉妹誌に生理痛と食事・体型・生活習慣をテーマとした国際論文が掲載されるなど、学術面での活動を重視。近年では、自治体や企業のデータヘルスを活用した健康経営や都市構想など社会実装への働きかけを複数手がける。厚生労働省「第13回健康寿命をのばそう!アワード」他、多数のアワードを受賞。

(※内容は2026年2月取材時点のものです)