健康相談室 Consultation

女性特有のがんと仕事を両立するには? 職場はどう支援する?【働く女性の健康相談室⑨】

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がんの治療を受けながら働き続ける女性が増えている中、職場への伝え方や、派遣社員としての働き方、子どもへの説明、さらには転職活動まで、不安や迷いを抱える人は多くいます。また職場側も復職後の仕事量の調整や、「どこまで配慮すればいいのか」「本人にどう接すればいいのか」と悩むケースがあります。今回は、女性特有のがんと仕事の両立をテーマに、国立がん研究センター中央病院のがん専門相談職・松永直子さんが、従業員と職場双方の視点から実践的な対応策を解説。一人ひとりの状況に寄り添う支援のあり方と、働きやすい職場づくりのヒントをお届けします。

相談者

がんの治療を終えた女性従業員への仕事量は、職場として何に注意して、どのように調整すべきでしょうか?

松永直子さん

従業員が「がん治療を終えた」と言っても、内服治療や定期的な通院が続いたり、治療の副作用が残ったりする場合もあります。責任感の強い方ほど「早く仕事へ戻らなければ」と焦る気持ちもあるかと思います。また生活のため、収入がすぐに必要な方や、今までの自分に戻りたい思いから、治療前と同じ業務量に臨もうとする方もいらっしゃいます。そうした様々な思いや事情を抱えている可能性があることを想像しながら、まずは、本人の思いや希望を聞き、どのような働き方で、どのような配慮があれば働けそうかを、尋ねてみてください

がんの種類にもよりますが、例えば乳がんの手術後であれば、しばらく重い荷物を持てなかったり、抗がん剤の副作用で指先にしびれを感じてパソコンのキータッチや水仕事が負担になったりする場合があります。子宮や卵巣など婦人科系のがんの手術後は、リンパ浮腫や排尿トラブルなどで長時間の立ち仕事が負担になったり、お手洗いの配慮や工夫が必要になったりする場合もあります。また、電車が混む時間を避けて通勤したい方や、しばらく残業せず体を休めたい方もいます。

繰り返しになりますが、具体的にどのような配慮があれば働けそうかを本人に尋ねることが一番いい方法です。そして、ずっと同じ方針を続けるのではなく、時々面談し、体調や治療の状況などに応じて働き方や仕事量について相談していくのがいいでしょう。

気をつけたいのは、本人の意向を確認せず、良かれと判断して仕事量を減らしたりすることです。職場側は相手に配慮する思いがあっても、本人には「自分は不必要だと思われているのでは?」といった誤解を与えかねず、復職後のモチベーション低下につながる恐れがあります。まずは自分のことを理解してくれようとしている、相談できるという安心感を持ってもらうこと。それが本人にも、職場全体にもいい影響を与えると思います。

主治医からの診断書が必要であれば、予測される療養期間などを書いてもらうのもいいですが、すべての医師が職場に必要な情報を理解し、それらを網羅して診断書を記載するのは困難です。そのため厚生労働省は、治療と仕事を両立しやすくすることを目的に、治療と就業の両立支援指針治療と仕事の両立について|厚生労働省)を設けています。この指針は、患者である従業員が職場に配慮してほしいことについて、自分の希望だけではなく医師の意見を添えることで、医学的根拠をもって職場との相談を円滑に進められるようサポートするものです。この指針で示している「主治医意見書」や「両立支援カード」などの様式を活用するのもおすすめです。

従業員に熱意があっても、安全に業務を執り行えないと判断されることもあるかもしれません。その際は、経済的な補償を受けられる社内制度や、傷病手当金など該当する制度があれば、本人に提案してください。

相談者

私は乳がんの放射線治療・抗がん剤治療と、派遣の仕事を両立したいと考えています。派遣先の会社には、仕事の調整をお願いできるものなのでしょうか?

松永直子さん

まずは雇用主である派遣元に相談するのが一般的です。現在の派遣先での仕事を継続希望であれば、派遣元の担当者に面談を申し入れて、希望をしっかり伝えてください。その際、自身のことを説明できるように、できるだけ情報を整理しておいてください。ある患者さんは「自分の取扱説明書のように」と表現していました。「こんな症状が出た場合、こんな工夫をすれば働ける」など、自分から職場に提案できるように準備します。病名や、これから予定されている治療、通院頻度、副作用、こんな風に対処したら過ごせる、など具体的な情報を伝えるといいでしょう。というのも、職場の方は自身や家族が経験していないと、がん治療について想像することが難しいかもしれないからです。ポイントは「こうすればできる」「ここまではできる」など、できることの具体的な情報を一緒に伝えることだと思います。

また「職場に対して後から、やっぱりこれも大変とは言いだしづらい」という声も聞きます。ですから、支障がありそうなことはしっかり伝えた上で、「思っていたより大丈夫でした」という状況にできたほうが、気持ちの上の負担は少ないようです。

なお、病気のことは個人情報なので、派遣先も派遣元も、「こちらから積極的には聞きづらい」「無理やり聞くわけにはいかない」と考えているということも、ぜひ、心に留めておいてください。そのため、患者自身から積極的に情報を出し相談することが、誤解や憶測を避けることにもつながると考えています。

派遣元に相談する前に、主治医に治療のスケジュールなどを相談するのもいいでしょう。たとえば「平日毎日通う放射線治療は、午前中でも終わりそうなので、午後から出社するために治療の時間帯を午前中の早い時間にできますか?」「抗がん剤は金曜日に投与し、当日と土日に家で休めたら月曜は出社できそうですが、そういった治療スケジュールは可能ですか?」などです。

その上で派遣元に相談し、派遣元、派遣先と三者で面談するタイミングがあれば、自身の思いを伝えてください。仕事とはいえ、最後は人対人です。職場への感謝を伝えつつ、治療が終了したら、また職場に貢献したい気持ちなどを伝えてみてください

相談者

仕事と子育て、がん治療の両立で悩んでいます。保育園児の子どもには、私のがんのことを言うべきでしょうか? 子どもの保育園の先生にもがんを伝えるべきでしょうか?

松永直子さん

お子さんの性格や周囲のサポートにもよりますが、一般的には4歳頃を過ぎたら、できるだけ「がん」という言葉を使って伝えたほうがいいと言われています。小さな子どもだと思っていても、大人同士の何気ない会話を聞いていたり、いつもと違う雰囲気を感じ取ったりして、「何かとてもよくないことが起こっているけど、私には教えてもらえない」と、悪いほうに想像を膨らませてしまうこともあります。

話すタイミングは、お子さんがリラックスしている時、一緒にお風呂に入っている時、ご飯の後など、落ち着いて話せる時間にしましょう。家族が同席してフォローしてもいいと思います。「お母さんは〇〇というがんなんだけど、病院で先生に治療してもらって、頑張っているんだよ」などと事実を伝え、「〇日から〇日間入院するけれど、会いたくなったら面会できるし、お父さん(おばあちゃん)の携帯電話でお話しもできるからね」と、お子さんが不安になった時の対処法も一緒に伝えるのもいいと思います。

保育園の先生には、必ず伝えなければならないわけではないですが、伝えたことにより保育園での様子を見守ってもらえたり、「〇〇先生にはお話ししているから、相談したいことがあったらなんでも聞いていいんだよ」と、お子さんが相談できる相手を広げたりすることができます。相談できる人は、普段から仲良くしている親戚のおばさん、おじさん、年上の親戚のお兄さん、お姉さんなどもいいかもしれません。小学生であれば、担任の先生、保健室の先生、スクールカウンセラーにも見守ってもらえるよう伝えることもできます。

これとは逆に、お子さんに伝えたことにより、同じ保育園のママ達や、ご近所などに意図せず伝わってしまうことを心配に思う方がいるかもしれません。そんな場合、これが必ず正しいやり方、というものはありませんが、お子さんに伝える時に「これは家族の大切はお話だから、外では話さず、話したい時にはお母さんかお父さんに言ってね」と伝える範囲を限定することも一つの方法です。

相談者

乳がんの手術後、抗がん剤と放射線の治療を続けています。再就職を考えていますが、治療のことを伝えると不採用になるのではないかと不安です。採用面接の時に、治療のことは伝えたほうがいいでしょうか?

松永直子さん

がんであることと、仕事ができるかどうかは別の問題です。しかし、抗がん剤や放射線治療を続けるにあたり、通院や副作用で休みを取ったり、勤務中に体を休めたいと感じたりすることもあるかもしれません。治療と仕事を両立するために、「言うメリット」は多くあります。また仕事に影響が出る可能性がある場合、後々トラブルにならないよう“どのタイミングで・どこまで伝えるか”を自分で上手にコントロールすることも大切です。

言うメリット

  • 無理のない働き方の環境を最初から設定できる
  • 配慮を受けやすい
  • 後からの調整がスムーズ

言わないメリット

  • 偏見を避けられる
  • 採用に影響しにくい

では、どのタイミングで伝えたらいいでしょうか。採用面談前の書類でがんについて伝えた場合、求人先は驚いてしまうことも少なくないでしょう。まだ会ってもいない相手から「働くのは無理でしょう」と判断されてしまうとしたら残念です。同じような状況の患者さんのケースを見ると、書類審査を通り、面接の場で「通院はするけれど、元気で働ける姿」を見せながら、治療のことを伝える方が多いようです。その際、できないことより、できることをしっかりアピールしてください。もちろん、仕事に影響が出ないのであれば、実際に働き始めてから同僚に伝える、もしくは、全く伝えないで働くという方法もあります。

また、始めからフルタイム勤務ではなく週3日など短い時間で働いてみて、体調と相談しながら勤務日を増やしたり、治療が落ち着いたところで、新たにフルタイムの仕事へ転職したりすることもできるのではないでしょうか。そしてまずは、予定している仕事と治療で齟齬が生じないかを、主治医に相談してみましょう。起こり得る副作用と、その対処法を看護師に聞いてみるのもいいと思います。

松永直子さん
国立がん研究センター中央病院 がん専門相談職

2013年より国立がん研究センター中央病院にがん専門相談員として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士、認定医療ソーシャルワーカー、認定がん専門相談員、両立支援コーディネーター。「患者さんが治療と生活のバランスを大切にしながら、安心して過ごせるような支援」を心掛けている。

(※内容は2026年6月取材時点のものです)

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