健康相談室 Consultation

男性更年期の治療・受診・仕事の悩みを専門医が回答|漢方薬、医師への伝え方、改善しない時の対策とは【男性のための健康相談室②】

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男性更年期障害(LOH症候群)は、受診先や漢方の選び方、治療が効かない場合の見立て、仕事との両立などで迷いやすいテーマです。第1回(関連記事:男性更年期とは? 症状のチェック法は? 受診先と治療法を専門家が回答)に続き、専門医の田村貴明さんがQ&A形式でわかりやすく解説します。

よく使われる漢方処方があるので、まずは専門医に相談を

相談者

男性更年期の症状に効果的な漢方薬はありますか? 市販のものでもいいのでしょうか?

田村貴明さん

男性更年期障害の治療で使われる代表的な漢方処方は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)などです。ただし漢方薬は「この症状にはこの薬」というだけでなく、本来、体質や状態を細かく見た上で処方すべきものですし、男性更年期の場合は特に体質や個々の状態の判断が重要だと思うので、私個人の助言としては、症状だけを頼りに自己判断で市販薬を購入するのはお勧めしません。必要な場合は、漢方に詳しい医師に相談して処方してもらうか、処方名を聞いてその市販薬がある場合は、それを購入するのがいいと思います。

かかりつけ医が「男性更年期」を知らないことも

相談者

男性更年期症状について、かかりつけ医(内科)に相談したのですが、なかなか状況が伝わりませんでした。専門医以外の先生の場合、男性更年期の症状をどのように伝えるのがいいのでしょうか?

田村貴明さん

日ごろから、不調があったときに相談できるかかりつけ医をお持ちなのは、安心ですし、いいことですね。その先生が、あなたが相談したかった男性更年期について期待したような反応をしてくださらなかった、ということなのでしょう。

実は、一般に男性更年期障害と呼ばれている性腺機能低下症(LOH症候群)の診断・治療指針が整備され、注射によるホルモン補充療法が保険診療として行われるようになったのは比較的最近のことです。そのため内科のかかりつけ医が、男性更年期障害という概念や、性腺機能低下症という疾患名を知らなくても不思議ではありません。現代の医療は細分化されており、専門化が進んでいるので、広い領域を見ることの多い一般の内科の先生であっても、仕方ないことだと思います。

そして、あなたは自分が男性更年期なのではないかと疑い、専門家に診断をしてほしいのだと思います。そうであれば、今回はかかりつけ医の先生に詳細を理解してもらうことより、男性更年期を診る専門の医師につないでもらうようお願いをするのが良さそうです。

男性更年期障害を診るのは、泌尿器科もしくは、ホルモンを扱う内分泌学を専門とする医師です。こうした診療科を紹介してもらう、または男性更年期障害の勉強をしている日本メンズヘルス学会のテストステロン治療認定医(日本メンズヘルス医学会 テストステロン治療認定医(地図検索))に紹介状を書いてもらうよう、かかりつけ医にお願いしてみてください。

ホルモン補充療法で改善しないなら、原因疾患は別にある可能性も

相談者

性腺機能低下症と診断され、ホルモン補充療法を半年ほど続ければ改善するはずとのことでしたが、改善せず、ホルモン補充は打ち切られて漢方薬に切り替わりました。しかし症状は全く改善せず、2年ほど不調が続いています。短期間休職しましたが、ずっと休んでいるわけにもいかず、現状は何とか仕事をしている状態です。これ以外の対策はないのでしょうか? 改善が見られない人はどうすればいいのでしょうか。

田村貴明さん

長い期間治療をしているのに改善が感じられないのは、つらいですね。あなたの経緯を伺うと、不調の原因が男性ホルモン(テストステロン)の低下ではない、別の原因かもしれないと疑ってみる必要がありそうです。

というのも、不調の原因が男性ホルモンの低下であるなら、ホルモン補充療法で症状は改善するはずなのです。しかし、半年続けても改善しなかったということは、男性ホルモン値が実際に低くて性腺機能低下症の症状が出ていたとしても、実は不調のもとになっている原因疾患は別にある可能性が高いと考えるべきだからです。

たとえば、睡眠障害やうつなどの精神疾患が原因である場合、そのメンタル症状の治療を行わないと、あなたの感じている男性更年期のような症状は改善しません。漢方薬に切り替えても、性腺機能低下症に対する処方であるなら、症状が改善しなくても不思議ではないのです。

ですから、性腺機能低下症という診断をいったん横に置いて、別の原因がないかを探る必要があるでしょう。特にメンタルの症状が出ているような場合、性腺機能低下症とうつ病は症状が重なることも多いので、一度、精神科や心療内科に相談してみることをお勧めします。

男性更年期の言いづらい悩みは、伴走してくれる第三者(専門家)へ

相談者

イライラや気分の落ち込みなどの不調を感じたので管理職を外れ、負荷の少ない業務に変わったのですが、結局、ストレスは変わらず、症状もさほど好転しませんでした。男性更年期と仕事を両立するには、どうすれば良かったのでしょうか。アドバイスがあれば頂きたいです。

田村貴明さん

ご相談の文面から、医療機関の受診はまだしておられないのではないかと想像します。まずは一人で思い悩むのではなく、医療機関を受診して、必要な治療を受けてほしいと思います。加えて、もし勤務先に健康相談室や、産業医や保健師などに相談できる仕組みがあるなら、そこを活用してみるのがいいでしょう。

男性更年期障害のセルフケアとして、「まずは生活習慣(運動・睡眠・食事)を整えましょう」と言うのは簡単ですが、つらい状態の人にそれを言うと「できない自分」を責め、さらに追い込まれてしまうこともあります。それより大事なのはまず、あなたの状況を理解して伴走してくれる第三者を見つけることです。男性更年期については、職場や家族には言いづらいこともあると思うので、第三者である医療機関や会社の産業保健職などの相談窓口、カウンセラーなど、プライバシーを守った上で相談できる専門家を頼ってみることをお勧めします。

オンライン診療は治療の入口には有効。海外からの薬の並行輸入は危険

相談者

私の場合は、男性更年期について会社側も理解してくれ、配慮があります。でも自分のパフォーマンスが上がらないことに対して、自分が一番歯痒さを感じています。今使っている薬以外に男性更年期の特効薬があればと思いますが、研究は進んでいるのでしょうか。海外から並行輸入する人もいると聞きますが、日本でまだ認可されていない薬もあるのでしょうか。またオンライン診療でもいいのでしょうか。

田村貴明さん

会社からの配慮を受けられているとのこと、いい環境の職場で働いておられますね。

さて、男性更年期障害の治療の特効薬は、いまのところ、ありません。ただ、現在日本で保険適用になっている薬は男性ホルモンの注射剤だけですが、自由診療であれば、ジェルタイプや内服タイプのホルモン薬、数カ月効果が続く製剤など、剤形や使い勝手の違うホルモン薬が選択肢に加わります。

特にジェルタイプは、毎日肌に塗るという使い方なので、血中のホルモン濃度の変動が保険適用の注射剤に比べて起きにくいという特徴があります。注射剤の効果が出にくい人にとっては、選択肢として有効でしょう。現在、ジェルタイプや内服タイプといった保険適用外の薬は、費用は高めになりますが、自費診療の医療機関で処方しているところがあります。

なお、ご自分で海外から並行輸入をして独自に使っている人がおられるようですが、それは危険なのでやめてください。海外製の濃度の高い製剤を使ったり、医師の管理を外れて長期間使用するなどの行為は、副作用の危険があります。ホルモン薬の過剰な使用により、多血症、肝機能障害、心血管イベントリスクの上昇、精子の造成能低下による不妊症、多幸感など、多様な副作用が報告されています。薬は医師の管理のもと使用してください。

オンライン診療については、男性更年期障害の悩みは人に知られたくないと思っている人も多いため、受診の入り口として使うには、ご本人にとって利用しやすい受診方法だと思います。ただし、薬の投与に関しては血液検査が必要になりますし、患者さんに会って直接確認して得られる情報も医師にとっては重要な診断材料になるので、治療を継続する際は、オンラインだけではなく、必要に応じて対面診療と組み合わせた診療を受けてほしいです。

前立腺がんの知識も得て、PSA検診の受診を

相談者

従業員の健康や生産性を改善するため、社内研修を計画しています。男性の健康課題をテーマにしたいのですが、男性更年期以外で取り上げたほうがいい男性特有の健康課題はありますか?

田村貴明さん

仕事のパフォーマンスや生産性に直結するテーマとしては、男性をテーマにするなら、やはり男性更年期が中心になると思います。ただ、より広い意味で「健康に人生を送る」啓発を行う研修であれば、女性の乳がん、子宮がんなどに対応するものとして、男性は前立腺がんの知識を持っておくといいのではないでしょうか。

PSA検診(前立腺がん検診)は自治体でも広く助成が行われているものの、受診率が低いのが現状です。基本的な受診対象年齢は50歳以上ですが、血縁者に前立腺がんの経験者がいる方は、40歳以上からの受診が推奨されています。早めに、この疾患についての正しい知識を得ておくのはいいと思います。

田村貴明さん
千葉大学大学院医学研究院泌尿器科 特任助教

千葉大学医学部卒業。泌尿器科専門医。医学博士。ロボット(da Vinci)手術認定医、テストステロン治療認定医。日本泌尿器科学会、日本癌学会、日本メンズヘルス医学会など多数の学会に所属。千葉や神奈川の地域中核病院でおもにがん診療に従事した後、現在は大学でがんの転移メカニズムや早期診断の基礎研究に取り組む一方、男性更年期の診療や啓発活動にも力を入れている。

(※内容は2026年8月取材時点のものです)