フルオーダーメイドの販売用グッズやノベルティの企画・製造を手掛けるアイグッズは、80名の従業員の約7割が女性。2016年に設立した従業員の平均年齢28歳という若い企業は、従業員の声を聴きながら、社長や女性リーダーが中心となって従業員の健康や女性の働きやすさへのサポートを進めています。現在進行形で調整しているという取組についてうかがいました。
- 生理休暇の名称を「L休(エルきゅう)」にして、ホルモンバランスに起因する女性の不調全般を休暇の対象に
- 育児休業取得第1号の女性取締役が提案し、妊活へのサポートを開始
- ランチや朝食を社内で提供。若い従業員の健康的な食生活を支える

生理休暇の名称を「L休」にし、生理がつらければ休んでもいいと周知
アイグッズの女性の健康課題に関する取組を教えてください。
野田七海さん(以下、野田さん)2019年から生理休暇の名称を「L休」とし、生理だけでなく、PMS(月経前症候群)など、ホルモンバランスに起因する女性の不調全般の休暇の名称としました。L休のLとは「Ladies」の頭文字です。男性上司に「生理」と言いづらいのではないかという配慮から生まれた制度で、休暇取得の際は、上長に「L休を取得します」と伝えるだけで、詳しい症状などは言わなくても休める制度です。
L休は有給休暇ですか?
野田さんはい。最初、年次有給休暇から引かれていきますが、年休を使い切ってしまった場合でも、上司と相談の上、日数の上限なく有給で休めます。生理休暇として使いたいからほかの理由で年休を使わずにとっておくといったことがないようにしています。
L休がスタートしたきっかけを教えてください。
佐藤桃香さん(以下、佐藤さん)生理が重い女性従業員から、生理の不調があるときに休みたいと相談されたのがきっかけです。生理休暇を取れることが浸透しておらず、生理で休んでもいいのかと従業員が迷う状況でした。相談された管理職が代表に報告し、どうしたら女性が生理でつらいときに休みやすくなるのかを調べました。そのときに、生理休暇の名称を変更することで休暇申請しやすくしている会社があると知り、弊社でも「L休」という名称にして、生理でつらいときは会社を休めることを周知するとともに、休暇を取りやすくしました。
妊活への支援制度もあるそうですね。
野田さん妊活に興味がある従業員や、将来の妊娠に不安がある従業員が、専門家に月1回30分の個別カウンセリングで相談できます。専門家は、弊社で契約しているクリニックの医師で、利用を希望する従業員が個別に予約を取って受診します。2022年にスタートしました。
不妊治療への補助ではなく、カウンセリングが対象なのですね。
佐藤さん不妊治療ひとつとっても様々な状況の社員がいます。まずは妊活を検討している人が全員通る「相談」の支援から始めました。今後、治療そのものへの補助希望の声が多く上がれば、また社内でも検討していきたいと考えています。
妊活へのサポートは従業員のニーズがあって整えることが多いなかで、対象者がいないのに制度を作ったのが素晴らしいですね。きっかけはあったのですか?
佐藤さん2021年に出産して復帰した、取締役の女性マネジャーの提案です。その役員は弊社の産休・育休から復帰して働く女性第1号ですが、自分の経験を踏まえて、従業員のライフステージに寄り添った制度を充実させたいと役員会で提案しました。妊活への支援もいつか必要になる人が現れると考え、先手を打って導入しました。
ライフステージに寄り添った制度も整えたとのことですが、その内容も教えてください。
野田さんLife event(ライフイベント)、igoods(アイグッズ)、Long(長く)、Active(アクティブ)の頭文字を取って「LiLA(リラ)」と名付けられた制度で、2019年にスタートしました。子育て支援制度と多様な働き方へのサポートを軸として、さまざまな制度をパッケージにした制度になります。出産に関する制度の一部は女性限定になりますが、ほとんどが男女関係なく利用できます。ユニークなものだと、育児支援の一つとして「保活支援コンシェルジュサービス」があります。社外の事業者を利用し、初めての保活を分かりやすく案内しつつ、お勧めの保育園を探し、見学の予約手続きを代行するなど、保活する従業員を支援するものです。
LiLAは、現在は25の制度の集合体となっています。ただ、弊社の制度は年度ごとに見直しているので、今後もニーズや利用状況を見ながら、増やしたり整理したり、運用を変えたりする予定です。
妊娠や出産、育児に関する制度が25個というのは、とても多いですね。
佐藤さん代表や役員のアイデアや従業員の意見をもとに、徐々に整えています。弊社は2016年に設立し、現在も従業員数は80名程度という、成長中の会社です。福利厚生も手探りで整えているという過程にありますが、だからこそ、従業員の声を聴きながら、フレキシブルに変えていけるという良さもあります。
課題をブラックスボックス化しない、従業員の声を拾い上げる取組
従業員の声を反映する工夫もされていますか?
佐藤さん1カ月に1回、上司と部下の面談をしています。業務面談ですが、私生活での悩みも相談できる場です。そこで聞いた内容で、会社でサポートをしたほうがいいと思うことや多くの従業員に当てはまる課題があれば、直属のマネジャーを通じて、最終的に経営陣が集まる会議で代表にも共有されます。定期的に全従業員に業務や福利厚生、働く環境など幅広く聞くアンケートを採っており、書かれた意見も検討しています。
健康課題への対応を含め、女性の働きやすさ推進については、女性が経営層にいるのも大きいです。弊社の経営陣は4名で、そのうち2名が女性です。育休取得第1号となった女性取締役は会社の制度を利用しながら仕事と子育てを両立していて、ロールモデルにもなっています。7割が女性という会社ですから管理職に女性も多く、女性の声が経営層まで届きやすい環境だと思います。
野田さん女性が多いので話しやすい職場でもあります。生理で体調がすぐれないときも言いやすいですし、体調が悪そうな人を気遣える空気もあります。
「フューチャーディナー」も、話しやすさを生んでいる制度です。明るい未来を描くディナー会議の食事代が、従業員1人につき月1回、役職者なら月2回まで一定金額を補助する制度で、参加者は従業員に限定されますが、部署全員でも、部署の垣根を越えてもいいし、大人数でも2人だけでも構わない、組み合わせ自由なディナー会です。業務時間中に相談するタイミングを取りづらかったり、場所を確保しづらかったりすることがありますが、それが機会損失にならないように制度として確立しました。食事をしながら楽しい雰囲気で行えるため、会社とは違うプライベートの話も自然に出てきます。これからの組織のあり方について議論をしたり、今後のキャリアについてなど社会人生活を送る上でのヒントをもらったりしています。
食生活が乱れがちな若い世代を食事提供でサポート
食へのサポートが充実していますね。社内にカフェがあるのに驚きました。

佐藤さん「アイグッズカフェ」といって、学生スタッフが運営しています。コーヒーはもちろん、フルーツスムージーからプロテインまで、さまざまな健康的な飲み物やフードを用意していて、無料で提供しています。学生スタッフはアルバイトなのですが、社会に出る前の研修のような感覚で、メニューを考案するなど運営に関わってもらっています。
このキッチンスペースで、今は週4日、プロの料理人がオフィスに来てビュッフェ形式のおいしいランチを作ってくれる「アイグッズシェフ制度」が行われています。会議のために来社するお客様や採用の選考学生に振る舞う目的で作られたのですが、従業員も無料で利用できます。
また、フリー軽食が常備されていて、朝ごはんとしてシリアルやヨーグルトを食べたり、間食にナッツやチョコレートなどをつまんだりできます。こちらも、ただおなかに溜まるだけでなく、健康に配慮したラインナップを心掛けています。「アイグッズカフェ」は7時からオープンしていますが、学生スタッフが「朝食としてアサイーボウルを提供したい」と提案してくれて、会社が材料を用意し、学生スタッフが調理して、朝、提供されています。数に限りがあるので、そのために朝早く出社する従業員もいるんですよ。
弊社はフレックスタイム制で、定時の始業時間である9時前であっても出社して構わないのですが、遅くまで仕事するのでなく、早く出社して、朝を有効活用することを勧めています。いずれも強制してはいないのですが、食事の提供で自然に実現しています。

「ご飯」ひとつとっても、従業員の働き方を変えているのですね。
佐藤さんはい。社内外の方々と交流する時間を持てるだけでなく、それが私たち自身の成長にもつながっていると感じます。というのも、弊社では福利厚生を検討する際、常に「お客様への価値提供」を主軸に据えており、そのための土台として「働く社員の健康」を追求することが重要だと議論しています。従業員一人ひとりが活力を持って働くことで、周囲にプラスの影響を与えられていればうれしいですね。

野田さん私は自炊が苦手で、3食買って済ませても平気なタイプなのですが、会社のおかげでバランスの取れた食生活ができています。朝と昼だけでなく、シェフがランチで余った料理をおにぎりにしたりお弁当にしたりして置いてくれるので、それを持ち帰って夕食にすることもあります。会社の食事へのサポートもあって、健康意識の高い従業員が増えていると思います。
事業フルオーダーメイドのオリジナル販売用グッズ・ノベルティの企画生産事業
従業員数/80名 女性従業員数/52名(2024年11月時点)
(※内容は2024年11月取材時点のものです)