東京・府中の保険代理店、リーズでは、4年前に女性従業員が増えたことをきっかけに、定期的に「女性健康ミーティング」を実施するようになりました。男性経営者が、本当に女性から必要とされる健康課題への施策を知る目的で始めましたが、結果的に、男女問わず働きやすい会社づくりに貢献しているといいます。リーズ社長の長岡誠治さんにお話をうかがいました。
- 定期的に「女性健康ミーティング」を実施し、女性が本当に必要とする施策を検討
- 男性上司に申請する必要があった生理休暇を、女性の健康管理委員経由の申請に変更
- 「女性健康ミーティング」を、女性同士の課題を共有できる場に

男女共用のトイレの悩みを、ミーティングで女性同士が共有
リーズでは、月に1度、「女性健康ミーティング」を開催しているそうですね。
長岡誠治さん(以下、長岡さん)4年前から行っています。以前は四半期に1度だったのですが、どんどん増えて、今は月1回になっています。8名の女性従業員の中から2名、健康管理委員を指名し、まとめ役になってもらっています。病院と薬局関係の企業での就労経験がある方々で、女性の健康を考えるのに適任なのではないかと私が判断してお願いしたところ、快く引き受けてくれました。
始めた頃は私も参加していたのですが、何回か経験して、女性だけのほうが話しやすいと考え、健康管理委員に任せるようになりました。話し合った内容で、会社の施策への提案などは報告してもらうようにしていますが、基本的に自主性に任せています。
ミーティングが始まったきっかけと、現在はどのようなことが話し合われているのかを教えてください。
長岡さんもともとのスタートは、男女共に長く働いてもらうために健康経営に着手したことでした。男女それぞれに定期健康診断にオプションで付けたい検査項目を聞いたところ、男性からは脳ドックや前立腺の検査が、女性からは婦人科検診の希望が出ました。ただ、私たち経営陣は、乳がんや子宮がんなどの病気のことは知っていましたが、女性に聞くと、病気だけではなくPMSなど生活の中でケアする必要がある健康課題もあり、人によって差も大きいとのことでした。採用するごとに個々のニーズを聞く必要もあると感じ、女性の健康ミーティングを始め、本当に必要な施策を女性同士で話し合ってもらうようにしたんです。
さらに2024年からは、私が提案して「フェムケア」や「フェムテック」について話し合ってもらいました。私が健康経営に関するセミナーにパネラーとして参加したとき、「フェムテック」の講演もありました。フェムテックや生理、PMSの話を聞いて、弊社でも取り入れたほうがいいと考え、健康管理委員の2人に相談しました。
ミーティングから実行に移した施策はありますか?
長岡さん生理休暇の運用を変えました。ミーティングで女性従業員に話し合ってもらうだけではなく、私も女性特有の健康課題について考えようと思い、まず弊社の生理休暇の利用状況を調べたんです。すると、生理休暇は有給で取得できると就業規則にあるのに、誰も使っていませんでした。そこで、ミーティングで、なぜ使わないのか聞いてもらうと、そこで、弊社の休暇申請は上長にするので、上司が男性の場合、「生理休暇」と言いづらいということが分かりました。そこで、生理休暇は健康管理委員に申請するように変更しました。彼女たちから上長に共有しています。今は、生理休暇の名称を変える話し合いもしてもらっています。
施策に生かすための話し合いだけではなく、女性同士の情報共有の場にもなっています。例えば、弊社にはトイレが男女共用で1つしかありません。それで、生理用品を捨てるゴミ箱や急に生理になってしまったときのための共用の生理用品を目立たないように置いているため、新入社員には分かりづらいんですね。そこで、ミーティングの場で伝えているそうです。
健康ミーティングという名前は付いていますが、女性が集まって会社に希望することを話し合う場になっていますね。子どもがいる女性が多いので、最初の頃は、健康課題よりも休暇制度への提案が多かったです。ミーティングから、授業参観で休むための「授業参観日休暇」ができました。また、運動促進のために「スポーツジム行きます宣言」という活動も、「女性健康ミーティング」で話し合って、健康管理委員が中心となって始めてくれました。会社の近くにすき間時間に使えるような簡易なジムができたときに、「全額ではなくていいので、会社で補助してほしい」と提案されました。いずれも女性のミーティングから始まりましたが、男性従業員も利用できる施策となりました。

時短とリモートワークが介護離職を食い止めた
なぜ4年前、「女性健康ミーティング」を始めたのでしょうか?
長岡さん女性従業員が増えたからです。以前は、弊社は男性の経営陣が営業を担当し、女性はアシスタントとして雇用していましたが、4年前に女性を営業職として雇い始めたことで女性従業員の割合が高くなりました。女性が働きやすい職場に必要なことは、女性に考えてもらうほうがいいと考え、女性従業員のミーティングを提案しました。
なぜ女性を営業職として採用し始めたのですか?
長岡さん自分が契約した分だけ収入が上がるという属人的な経営でしたが、4年前、私が交通事故で入院し、腕も脚も骨折して固定されている状態でお客様の対応ができず、本当に迷惑をかけてしまいました。そのときに、属人的な経営はリスクが高いと感じ、退院後、経営陣に、営業も顧客対応も従業員と共にチーム制で行うことを提案しました。ですから、4年前に「女性従業員」が増えたのではなく、男女問わず、チームで保険代理業務をする従業員が増えたんです。
実は、意図的に女性を増やしたわけではありませんでした。ただ、保険の営業は募集してもなかなか人が集まりません。そこで、時短勤務を選択できること、リモートワークできることをアピールしたら、子どもがいる女性がたくさん応募してくれたんです。弊社のある府中はベッドタウンで、出産を機に仕事を辞めた女性が多く住んでいます。そのような中で、「もう一度働きたい」と考えている方が応募してくれました。出産前はバリバリ働いていたのですから、皆さん優秀です。せっかく採用したのだから長く働いてもらいたいと考え、会社の制度や運用を意識するようになりました。
経営方針がガラリと変わることに、男性従業員から反対意見はありませんでしたか?
長岡さん仕事を取った分だけ収入につながっていた経営陣からは、自分の収入が減ることへの不安の声はありました。ただ、属人的なやり方では会社の成長に限界があることも理解していたので、最終的には納得してくれました。
従業員がチームとなってお客様を担当することで、1人ひとりにかかるプレッシャーは軽減しました。以前はハードな働き方をしていた経営陣も、生活に余裕が出てライフ・ワークバランスが取れるようになり満足度が上がりました。時短勤務やリモートワークは、当初は子どもがいる女性をイメージした制度でしたが、年齢の高い男性従業員の中には親の介護が始まった人もいて、制度が整っているおかげで仕事を辞めずに続けられています。
社内の多様性が高まったことで、保険代理業としてもメリットが生まれました。保険とはお客様の困りごとに寄り添う仕事です。女性特有の病気や健康課題はセンシティブなことなので、女性の担当者のほうがお客様は安心できます。子どもがいる従業員は、子育て中のご家庭の学資保険の相談に共感を持って向き合えます。弊社には独身の女性もいますから、女性が一人で生きていく不安に寄り添うこともできます。介護が始まった従業員は、介護保険の必要性を実感しています。従業員1人ひとりの課題が、そのまま会社の強みになるんです。
会社としては、そのような多様な従業員に、長く、やりがいを持って働いてほしいと思っています。そのためにも、健康課題に寄り添うこと、さらに、従業員同士で悩みを共有し、助け合える環境を作ることは、今後も続けていきたいです。
事業生命保険募集に関する業務、損害保険代理業
従業員数/14名 女性従業員数/8名(2025年2月末時点)
(※内容は2025年2月取材時点のものです)