企業の取組事例 Case study

会社と健康保険組合が協力し合い、女性の健康課題に関する施策の実施と啓発を継続

[株式会社高島屋]

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高島屋は、「いつも、人から。」という経営理念のもと、DE&Iの取組を進めています。特に女性活躍の取組の歴史は古く、エクイティ(公平性)の観点のもと健康課題を含む様々な支援を積み重ねてきました。近年は、婦人科検診が中心だった女性の健康課題への取組を、生理休暇の見直しや女性健康相談窓口の設置など多様なアプローチで広げています。現在の取組を中心にお話をうかがいました。

POINT
  • 会社が補助する婦人科検診では、子宮頸がん、乳がん検査のほか、隔年で骨密度検査も実施
  • 生理休暇の呼称を「ハートフル休暇」に改め、取得事由に不妊治療も含めた
  • 「女性部下の不調への配慮の仕方が分からない」という男性の悩みが、女性の健康相談窓口設置のきっかけに
三田理恵さん写真
高島屋 人事部 ダイバーシティ推進室 室長 三田理恵さん

「生理休暇」の呼称を変更。より休みやすい制度設計に

近年、取り組む企業が増えている女性の健康課題について、高島屋では古くから積極的に取り組んできたそうですね。

三田理恵さん(以下、三田さん)はい、高島屋健康保険組合(以下、健保)と協力して、婦人科検診中心にサポートをしてきました。1986年から30歳以上の女性被保険者、2006年からは年齢制限をなくし女性の被保険者全員が対象になりました。現在は、子宮頸がん検査、乳がん検査、骨密度検査の補助をしています。

阪口展子さん(以下、阪口さん)婦人科検診は年1回、骨密度の検査は2年に1回で、健保が委託契約する医療機関と各事業所でのバス検診を利用した場合は全額健保負担、健保と契約がない医療機関で受診した場合は検査ごとに上限を決めて補助しています。骨密度は、弊社の女性従業員には更年期世代も多いことから、骨粗しょう症の早期発見につなげたいと思い、導入しています。また、婦人科検診は従業員の配偶者も全年齢を対象に、自己負担3割で受診していただけます。

阪口展子さん写真
高島屋健康保険組合 事務長 阪口展子さんは、大阪の拠点からリモートでインタビューに参加。

女性従業員が婦人科検診を受診するにあたり、工夫していることはありますか?

三田さん店舗・事業所は関東エリア・関西エリアにまたがっており、シフト制で働き方も多様ですから、そのような環境でも全員に受診してもらえるように、受診の仕方や場所の選択肢を増やしています。バス検診は、各事業所が設定した日に検診バスが来て、就業中に受診できます。それでも婦人科検診の受診率は40%程度。受診率をあげていくことは会社と健保の共通課題ですから、今後も協力して受診率向上のための取組を続けていこうと考えています。

阪口さん2024年には、婦人科検診未受診者に対して検査キットを使って郵送で検査を受けられるHPV(ヒトパピローマウイルス)検査を導入し、全額健保負担で受診できるようにしました。婦人科検診未受診者の声として、「時間がない」「つい後回しになってしまっている」といったものや、婦人科検診を恥ずかしいと感じたり怖いと思ったり、心理的抵抗感があるといったものがありました。郵送のHPV検査だけでいいわけではないのですが、若年層の子宮頸がん罹患率も増加傾向であることなどから、郵送で受けられる検査も導入して受診方法の選択肢を増やすことにより、なんらかの婦人科検診を受診しているという割合の向上を図ることが必要と考えて導入しました。その結果、導入初年度は、婦人科検診を未受診だった対象者の約8%が利用しました。このように、時代や状況に合わせて、検査の補助項目自体もアップデートしています。

近年は婦人科検診だけではなく、生理の不調など、女性の健康課題に幅広く取り組んでいると聞きました。

三田さん2021年に生理休暇を見直し、生理に関する不調に加え不妊治療などに適用範囲を広げた「ハートフル休暇」を導入しました。呼称を改め、「生理」という言葉への抵抗感を払しょくすることで、取得しやすい環境とすることを目的としました。不妊治療事由での取得は男女問わず利用できる制度となっています。ハートフル休暇は無給なのですが、2025年には有給で取得できる「ハートフルリザーブ休暇」も導入しました。

なぜ無給と有給があるのでしょうか。

三田さんもともと弊社では失効した年休を積み立てて傷病や看護・介護、育児、ボランティアといった特定の事由で利用できる制度があり、それを「リザーブ休暇」と呼んでいました。2021年のハートフル休暇導入時に、不妊治療でハートフル休暇とリザーブ休暇の両方を利用できるのであれば、生理にもリザーブ休暇を充てられるようにしてはどうかという意見が出ました。ただ、リザーブ休暇は正社員と無期契約社員を対象としており有給なのに対し、法定休暇である生理休暇から適用範囲を広げたハートフル休暇は、雇用形態に関わらず平等に取得できる休暇で無給で運用しており制度の統合は難しく、検討を重ねた結果、無給のハートフル休暇とは別に、2025年1月から正社員と無期契約社員を対象とした有給のハートフルリザーブ休暇を新たに導入し、2種類を運用することになりました。

健康に関する情報をスマホで手軽に確認できるような仕組みをつくる

休暇制度は職場の理解がなければ利用しにくいのではないかと思います。上司の意識改革など、女性の健康課題に理解のある職場づくりも進めているのでしょうか?

三田さん2024年にe-ラーニングで、管理監督者向けの女性の健康課題に関する研修を行いました。初めての取組だったので反応が気になっていましたが、研修後のアンケートではポジティブな反応が多く、うれしかったです。特に男性の管理監督者からは、「女性の部下たちは、こんなに大変な思いをしていたのだと初めて知った」という声もありましたし、「家庭内でも、家族にもっと優しくしたい」という声も聞かれました。マネジメントの中で生かしていきたいという声も多く、職場で女性の健康課題に取り組んでいくための良い機会になったと思います。

2025年も、新任の管理監督者に対して同様の研修を行いました。女性の健康課題だけではなく部下のウェルネスもマネジメント領域として見ていかないと、現場の生産性は上がらないということは継続的に伝えていきたいです。また、女性の健康課題に関する研修の後に、男性の健康課題も勉強したいという声もあったので、今後の検討課題にしています。女性に限らず、健康に関する研修は、入社時と40歳・50歳・55歳の「ポイント年齢」で行う研修で、ライフステージごとの健康課題も取り入れています。

管理監督者向けに研修を実施したことで、職場に良い変化はあったでしょうか?

三田さん研修終了後のアンケートで、男性管理監督者からは「女性特有の健康課題について理解は深まった」という回答を多く得ました。一方で、「現場で不調を抱える女性従業員にどう接していいか分からない」という不安の声も散見されたことから、現場がマネジメントしやすい環境整備として、2025年10月から女性従業員だけではなく管理監督者層も相談できるような「女性の健康に関する相談窓口」を設置しました。

阪口さん生理痛、PMS、更年期障害などの女性の健康に関する悩み・相談を、医師、看護師、保健師といった有資格者に24時間365日、電話で相談できるサービスで、相談料も通話料も無料です。もともと健保で契約した外部サービスによる健康相談のほっとライン、メンタルヘルスカウンセリングサービスはあったのですが、女性が安心して働き続けるためのサポートを強化したいと考え、外部サービスに相談して、「女性の健康に関する相談窓口」という専門的な窓口を設置しました。女性従業員が自分の体調について相談できるのはもちろん、管理監督者が女性部下の体調について気になることがあるときにも利用できます

たくさんの方に利用してもらいたいと思い、現在は健保のホームページや「けんぽだより」、健保公式LINE、社内イントラなどで、広報と告知を強化しています。

健保の公式LINEがあるんですね。

阪口さんはい、2024年から高島屋健保のLINE公式アカウント「高島屋健保de健康エール」を開設し、情報発信しています。従業員が長く働き続けられるために、また、医療費適正化のために、自分で自分の健康を守る「予防」が必須になっています。その実現には個人の健康リテラシー向上が重要ですから、健保として、健康情報の発信力強化が必要だと考え、一般的に身近で手軽に情報収集ができるLINEを導入しました。健診や補助金について配信し予約・申請忘れを防止したり、生活習慣病やがんについて学べるコンテンツを共有したり、健康にまつわるさまざまな情報を配信しています。LINE公式アカウントのメニュー欄に健診予約サイトのリンクを貼り、予約しやすくしています。健診の時期には告知を送り、受診率向上に努めています。

また、健保のホームページにバナーを置くだけではなくLINE公式アカウントのメニュー欄に厚生労働科学研究費補助を受けた研究班で運営しているホームページ「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」へのリンクを作り、女性の健康課題に関するQ&Aにアクセスしやすくしています。

高島屋健保のLINE画面のスクリーンショット。チャットエリアに「こんにちは 高島屋健保de健康エールです。今回は、以下のお知らせをUPしています」とあり、①2025年度健診予約をお忘れなく ②高島屋女性健康相談窓口について ③女性の健康啓発動画の案内、の3項目を掲載。下部に「健診・健康づくり編」「ハピルス健診予約サイト」「医療費照会」「当健保公式ホームページ」「各種申請書ダウンロード」「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」へのアイコン付きボタンが並んでいる。
公式LINEのトップ画面。6つのメニューには健診の予約サイトや各種申請書ダウンロードサイトなどへのリンクが貼られている。

三田さん私も登録していますが、運動動画や健康知識・レシピなど日常生活に取り入れやすいコンテンツも多く、届くのを楽しみにしています。

阪口さん月3回情報発信をしていますが、近年は女性の健康課題に関する情報コンテンツの発信を強化しています。内容は、運動やエクササイズの動画、食事レシピ、月経、更年期、痩せの問題、プレコンセプションケアなどです。2025年夏から、健保加入者の個人専用健康ポータルサイト「高島屋健保マイポータル」も開設したので、今後はこちらでの発信も強化していきたいです。

2022年に女性の制服廃止を決定し、現在は男女共に服装は自由になったとうかがいました。制服の廃止は女性の健康課題と関係があるのでしょうか?

三田さん廃止自体はジェンダー平等の観点からでしたが、結果的に女性の健康課題にもポジティブだったと思います。制服はサイズを選べますがオーダーメイドではありませんので、人によってはきつかったり動きにくかったり感じる方もいたと思います。今はスーツまたはジャケットを着用するなどお客様の前に出るのにふさわしいスタイルというルールはありますが、体調に合わせて締め付けのないデザインや素材を選ぶことが可能です。

足元は、もともと安全面を考慮してヒールは5cm以内と推奨されていましたが、制服の自由化に伴い、より自由に選べる空気はあります。有事の際には従業員が率先して動きお客様の安全を確保しなければいけませんから、履きやすく動きやすい靴は、女性の健康課題だけではなくお客様の安全・安心につながると思います。

取組の積み重ねが「女性に長く活躍してほしい」というメッセージに

会社と健保が非常に連携して施策を進めているのがいいですね。

三田さんそこが弊社の健康経営の特徴です。健保は会社からは独立した組織なのですが、健保の理事長を人事部長が務めていますから「ワンチーム」で活動しています。女性の健康課題については、ダイバーシティ推進室が政策課題を提案しつつ、健保と連携して施策を実行しています。健保で施策を実施する担当者は会社の人事部も兼任しています。

女性の健康課題に積極的に取り組む意義をどのように考えていますか?

三田さん女性が特有の健康課題で悩むことなく、自分の希望するキャリアを築くために必要な施策だと考えています。

弊社では、男女問わず、誰もが適材適所で働くことができる環境整備を大切にしています。そのためには、エクイティ(公平性)の考えのもと、個々の状況に応じた支援が必要です。それを実現する施策として、育児中の働き方を10パターンから選べるようにするなど、育児との両立支援に力を入れてきました。2025年2月末時点で女性従業員が55.9%と半数以上、平均勤続年数は男性が23.9年に対して女性が26.8年と長く働く女性が多くいます。2022年に「女性活躍推進行動計画」で掲げた2026年3月末までに女性管理職比率を30%にするという目標も、2025年3月時点で34.4%を達成していました。しかし、完全なジェンダー平等には到達できていませんので、引き続き取り組んでいかなければなりません。そのための施策の一つが、女性の健康課題への取組です。女性が生き生きと働き続けられるための支援に今後も取り組んでいきます。

阪口さんこれまでの健康に対する取組は男女共に生活習慣病(メタボ対策)などが中心で、女性の健康支援は「婦人科検診」に限られていました。けれども、女性の健康課題により積極的に取り組む必要があるという認識のもと、2024年から、会社と健保とが連携して従業員の健康支援に取り組む「コラボヘルス」として、女性の健康課題を重点項目に設定しました。そして、サポートするためのメニューを充実させ、リテラシー向上に向けた取組を強化しているところです。

高島屋では、女性が活躍し続けることを重視しているのですね。

三田さんはい。弊社はお客様の約8割が女性、従業員はクルーと呼ばれるパートタイムの方も含めると約7割が女性です。男女雇用機会均等法施行当時の弊社の記録をひも解いても、お客様の多くは女性であり、女性従業員の経験・感性が重要という考えが記されており、女性従業員に長く活躍してもらいたいという思いはその当時から脈々と受け継がれています。新卒採用でも女性活躍推進の取組が進んでいるという理由で弊社を希望する学生は多いです。

女性の健康課題への取組は、一つひとつが女性従業員の健康課題へのサポートになるだけではなく、継続的にさまざまな取組をすることで、女性の活躍を応援する会社からのメッセージも伝えられると思います。

株式会社高島屋

事業百貨店業
従業員数(社員・地域限定社員)/3,621名 女性従業員数/2,032名(2025年2月末)

(※内容は2026年1月取材時点のものです)