企業の取組事例 Case study

全体会議中のミニセミナーや社内に貼られた「栄養素メモ」などでこまめに情報を提供

[株式会社asken]

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AI食事管理アプリの開発・提供を事業の柱とするasken(アスケン)は、社内における女性の健康課題解決に向けた取組においても、自社の強みである「栄養」の知識を取り入れています。また、ハイブリッドワークを推進する企業だからこそ「オフィスに一堂に会さない従業員」に取組を浸透させるために、さまざまな工夫をこらしています。取組に携わる2人にお話をうかがいました。

POINT
  • 1時間のセミナーのほか、全体ミーティング中に10分で行う“ミニセミナー”を実施
  • 女性の健康課題を電話とメールで相談できる窓口を開設
  • 豆乳などの健康をサポートする飲料をオフィスで無償提供
石橋菜美さん、山崎由紀さん写真
左から、asken 経営管理部 部長 石橋菜美さん、経営管理部 人事総務グループ 山崎由紀さん

男性にセミナー参加を呼びかける際には「家族の健康」という言葉も盛り込んだ

askenで行っている、女性の健康課題への取組を教えてください。

石橋菜美さん(以下、石橋さん)女性の健康課題への直接的なアプローチとしては、「セミナーを中心とした知識の共有と配慮の啓発」と「女性の健康相談窓口の開設」があります。また、女性の課題に限定しているわけではありませんが、社内に健康的な食生活をサポートする飲み物や軽食を常備し、提供しています。それらの取組は、経営管理部と社内の有志による健康経営プロジェクトが中心となって行っています。山崎も健康経営プロジェクトのメンバーです。

まず、セミナーは、どのようなものを行っていますか?

石橋さん最初に行ったセミナーは、2024年1月に外部の講師を招いた1時間のものです。生理やPMS(月経前症候群)、更年期症状といった女性ホルモンに起因する女性の健康課題に関する知識のほか、不妊治療や女性特有のがんなどにも触れました

幅広く扱ったのですね。

石橋さん女性の健康課題に関するセミナーは初めてだったので、基本的な知識を学んでもらえる内容にしました。オフィスでのリアル参加とオンラインのハイブリッド開催で、告知は社内のチャットツールで行いました。告知の際に、女性の健康課題に関するセミナーですが男性もぜひご参加くださいと呼びかけた結果、任意のセミナーでしたが参加者の男女比は半々くらいになりました。

実はセミナーを計画した健康経営プロジェクトでは、センシティブな内容なので女性だけの開催にしたほうがいいのではないかという意見もあったんです。けれど、男性が理解していなければ相談のしづらさは解消しませんし、会社として取り組むのですから男女関係なく知っていてほしいと意見がまとまり、男性にも参加を呼びかけることにしました。セミナー後のアンケートでは、男性から「女性の健康課題について考えたことがなかったので、良い機会になった」といった意見が多く聞かれましたし、女性からも、男性にも参加を促したことを好意的にとらえる声が多く集まりました。

男性の参加者も多かったとのことですが、告知で工夫したことはありますか?

石橋さん告知の中の呼びかけに「ご家族の健康も大切ですから、知識を得るために、ぜひご参加ください」と入れて、男性にも私事として捉えてもらえるようにしました。

セミナーはその後も継続的に行っているのですか?

石橋さん10分程度の健康に関するミニセミナーを定期的に行っています。

10分は短いですね。どのように開催しているのでしょうか?

山崎由紀さん(以下、山崎さん)取締役も参加する全社ミーティングの中に、ミニセミナー枠を設けています。2024年9月に初めて開催し、それ以降、数カ月に1回のペースで行っています。

全社ミーティングはオンライン開催で、基本的に全従業員が参加しているので、セミナーを周知し参加者を募る大変さが解消されます。10分という短い枠ですが、テーマを1つに絞り簡潔に伝える努力をすることで、むしろ必要なことをしっかりと伝えられるようになりました。

ミニセミナーを開催し始めたきっかけはあったのですか?

山崎さん外部講師を招いたセミナーの後に、健康経営プロジェクト内で、1つのテーマについて知識を深めるような機会も設けたいという意見が出ました。それを弊社の産業医に相談したところ、従業員向けにお話いただけることになったんです。

その際に、健康経営プロジェクト内で、ハイブリッドで在宅勤務が多い方にも参加してもらえる方法を考える中で、全社ミーティングの中に時間を設けるというアイデアが出ました。取締役の理解も得て実現することになり、ミーティングの最後に10分ほどのミニセミナーをするようになりました。

ミニセミナーではどのようなテーマを取り上げているのでしょうか?

山崎さん初回の9月は、「性ホルモンと健康」というテーマで、女性に限定せず男性の健康課題についても触れてもらいました。更年期については女性だけではなく男性にもあること、それぞれの症状などについても扱っています。その後は、女性の健康課題に限定せず、食事と栄養など、広く関心を持たれそうなテーマを取り上げています。栄養については、従業員に管理栄養士・栄養士もいますから、その者が講師となって話すこともありますね。

社内の管理栄養士に相談しながら「栄養の知識」を社内で共有

女性の健康相談窓口も開設したのですね。

石橋さん2025年5月に、生理やPMS、妊活、不妊治療といった「プレコンセプションケア」に関わることを相談できる窓口を開設しました。外部の事業者を利用したサービスで、電話やメールでカウンセラーに相談できるというものです。

こちらはどのようなきっかけで始めたのでしょうか?

石橋さん事業者から、無料の相談窓口を提供したいとご連絡をいただいたんです。弊社が健康経営優良法人の認定を得たというのをご覧になって、興味があるのではないかとお声掛けくださったんです。プレコンセプションケアには課題感がありましたから、お願いすることにしました。従業員の女性はもちろん、男性がパートナーと一緒に利用することもできます。

誰が利用したかは会社に分からないようになっていますが、サイト閲覧者数の報告はあり、現在までに30件超の利用があったそうです。弊社の従業員数が約80名(2026年1月現在)ですから、非常に反響がありました。弊社専用のアクセスページには女性特有の健康課題に関する研修動画もあり、気軽に視聴できます。

ミニセミナーでは、栄養についても取り上げているとのことでした。「食」に関する健康サポートにも積極的に取り組んでいるのですか?

山崎さん食事管理アプリを開発・提供している企業ですから、私たち自身が食と栄養の重要性を体現し、日々の健康を大切にする文化を育んでいきたいと考えています。ミニセミナーでも取り上げることが多いテーマですね。

石橋さん例えば、2025年3月初頭には、女性の健康週間に合わせてカルシウムに関するセミナーを企画し、私が講師も務めました。カルシウムが不足すると骨粗しょう症のリスクが高まるので、意識を向けてほしいと思ったんです。

私自身の興味を紐解きながら構成したほうが興味を持ってもらえるのではないかと考え、社内の栄養士に相談しながら調べて勉強になったことを、率直に伝えました。カルシウム不足が健康に与えるリスクを伝えた上で、水が硬水の国(ヨーロッパなど)だと水を飲むだけでカルシウムを日常的に補給できるけれど、日本は軟水なので食材から意識して摂る必要があることや、カルシウムが多く含まれる食材などを紹介しました。情報収集に当たっては、「いいほね.jp(iihone.jp)」という骨粗しょう症に関する情報発信サイトや骨粗鬆(しょう)症財団のホームページを活用しました。

山崎さんカルシウムの後は、社内の管理栄養士に講師をお願いして、鉄分のセミナーも行いました。私自身も妊娠中に鉄分不足で鉄剤を処方されたことがありますし、身近なテーマだと思いました。鉄分不足は貧血を招き、めまいや立ち眩み動悸などの原因にもなります。女性だけの問題ではありませんから、そのような話も盛り込みました。

石橋さんミニセミナーには2問程度のクイズを盛り込み、楽しく参加しながら学んでもらえるように心掛けています。

食や栄養に関しては、セミナー以外にもサポートを行っていますか?

山崎さん冷蔵庫に野菜ジュースと豆乳を常備して、社員が自由に飲めるように無償提供しています。女性ホルモンと似た働きを持つといわれる大豆イソフラボンを含んだ豆乳は、女性への健康サポートになっているのかな、と思います。また、不足しがちなカルシウムが含まれているものも提供したいと考え、小分けになった小魚とナッツもオフィスに置くようにしました。人気があって、置いたらすぐになくなってしまいます。

また、朝食を抜いたり簡単に済ませたりする人も多いのではないかと考え、バナナなど、朝食にプラスしてほしい食べ物を自由に食べられるようにしています。提供する飲料や食品を置いているそばには、栄養面の特徴などを説明したメモを貼っています。

具体的には、どのような内容なのでしょうか。

山崎さん例えば、バナナはトリプトファンという成分が含まれており、日中に摂ることで、夜の睡眠のサポートに役立つとされています。少しでもヘルスリテラシーを高めるきっかけにしてほしいと考え、栄養士から得た情報とともに「朝食のサポートにしてください」というメッセージを添えています。セミナーに参加してもらったり長い文章を読んでもらったりするよりも、パッと目に入る場所に、今摂取しようと思っているものについて書いてあるほうが、気に留めてもらえるのかな、と思っています。

健康経営プロジェクトが社内チャット上で発信するチャンネルがあるのですが、豆乳の提供を始める際には、「大豆イソフラボンを摂ってもらえるように、豆乳の無償提供を開始しました」などと提供の背景を投稿し、大豆イソフラボンにはどのような効果が期待できるのかも紹介しました。飲料や食品を置く際には、導入の背景や栄養面の特徴などを紹介して、ただおなかが満たされるだけにならないように心掛けています。

全体ミーティング中のミニセミナーや飲料・食品に添えるメモ書きなど、"こまめな情報提供"がユニークですね。

山崎さん弊社はハイブリッドな働き方を推進しており、従業員がオフィスに集まる機会が本当に少ないんです。そういった中で、健康課題について必要な情報を伝えるにはどうしたらいいのかと健康経営プロジェクトで常に話し合っています。従業員の皆さんが行動する中で、ついでに目に留めたり参加できたりする仕組みを作りたいと、全体ミーティング中のセミナーや栄養素を説明するメモ書きのアイデア、社内チャットでの健康情報発信のアイデアが生まれました。

冷蔵庫内に整理整頓された紙パック飲料とヨーグルトカップ
冷蔵庫に常備されている豆乳と野菜ジュース。冷蔵庫の扉に、栄養素の説明が貼られている。

askenにとって、女性の健康課題をサポートすることは、どのような意味を持つでしょうか?

石橋さん弊社のバリュー(企業が大切にする価値観や行動指針)の一つに「健康を基点に」というものがあります。これは、“健康のプロフェッショナル”として、関わるすべての方の健康を第一に考えて行動するというものです。「すべての方」には、お客様だけではなく従業員も含まれます。ですから、会社にとっては、従業員の健康課題を解決することは、福利厚生というよりも、性別問わず全従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整えるという、強い意味を持つミッションだと考えています。生理などの健康課題に取り組むことで女性従業員が力を発揮できるようにすること、また、会社全体で女性の健康課題に対するリテラシーを高めることで、働きやすい環境が整っていくと思います。会社として従業員の健康をサポートすることで、パフォーマンスが最大化すると期待しています。

また、「健康を基点に」というバリューは、お客様やクライアント企業、従業員の家族も含めたすべてのステークホルダー(利害関係を持つ関係者全般)が対象になります。従業員はステークホルダーにとっての“健康のプロフェッショナル”ですから、社内で健康に対するリテラシーを高めることは、企業価値向上につながると考えています。

株式会社asken

事業インターネットを通じた食と健康に関するサービス提供
従業員数/約80名 女性従業員数/45名(2026年1月現在)

(※内容は2026年2月取材時点のものです)