長時間、休憩がなく、経血が漏れて服が汚れてしまった!
「会議が長くてトイレに行けず経血が漏れてしまった」「服だけでなく、会社の椅子まで汚してしまった」……実は働く女性の多くが、生理による出血が漏れてしまう「経血漏れ」に悩んでいます。ある調査では、働く女性の約4割が経血で仕事中の服(制服を含む)を汚し、3割弱は会社の椅子などを汚してしまったと回答しています※。
このコラムでは、2023年に東京都が実施した、働く女性約3,500人のアンケートに寄せられたリアルな声を紹介します。そしてそれらの体験談やお悩みに対して、産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師の飯田美穂さんに、働く女性に向けたアドバイスと、職場や上司、同僚男性が気をつけたいポイントについて聞いていきます。
- ※日経BP 総合研究所「働く女性の生理や更年期に関する調査 2023」

働く女性の声
※コメントは漢字や表現など一部変更しています。
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生理時に大量出血してしまい、下着はもちろんボトムスまで血まみれになってしまいました。応急処置をして予備の制服に着替えて業務を続け、自宅が職場から近いので昼休みに着替えに帰らせてもらいました。上司が女性なのですぐに相談できましたが、男性だったら相談しにくいし、昼休みに帰っていいよと言ってくれたかなと考えてしまいます。
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生理痛がひどく、また出血量も多いので制服や下着を汚してしまったことがありました。トイレから出られず、同僚を呼んで下着を買いに行ってもらったこともあります。トイレに生理用品や下着が常備してあればいいと思います。男性、女性、年代問わず、理解ある会社が増えることを願います。
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夜勤中に急に生理が来て制服を汚してしまい、腹痛や頭痛など、自分自身がつらいのに他人のお世話をしなければならないなんて……と感情のコントロールができなくなり、泣きながら働いていました。
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大量に出血してしまうときがあり、仕事中に洋服から椅子まで染み出してしまうことがある。男性社員は気づかないふりをしてくれたが、椅子は会社から貸与されている備品だし、着替えはないし、困りました。結局、その日はマフラーを腰に巻いて過ごしました。本当は早退させてほしかったけれど、相談できませんでした。
産業医・産婦人科医から
働く女性へのアドバイス
夜用ナプキンを使っても数時間で漏れるような経血量の場合は、「過多月経」かもしれません。子宮筋腫などの婦人科系疾患の可能性もあるので、早めに婦人科を受診しましょう。また経血量が多いと貧血になりやすくなり、めまいや立ちくらみ、疲れやすさや倦怠(けんたい)感、集中力の低下などを招きます。健康診断で貧血を指摘されなくても、「潜在性鉄欠乏(隠れ貧血)」である場合もあり、さまざまな不調の原因になっていることがあります。フェリチン(貯蔵鉄)の検査も受けてみることをお勧めします。
職場と上司・同僚男性へのアドバイス
研修や会議が長時間になる場合は、2~3時間ごとに休憩時間を設けるようにしましょう。会議に限らず、ラインでの製造作業など、一人だけ抜けると言い出しにくい現場では、一斉に休憩が取れるようルール作りをしておくのが望ましいです。
また生理の経血は排尿などと異なり、本人が我慢して止めたり、正確に予測したりすることができません。そのため、職場のトイレには生理用品を収納するロッカーや、従業員が必要に応じて使える生理用品を常備するなどの配慮が望まれます。そして制服がある職場の場合は、「女性だからピンク」などと白や薄い色の制服を選ぶのではなく、ボトムスは濃い色にしておくと女性は安心できると思います。

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。