生理に伴う不快な症状には、生理痛以外にも頭痛やむくみ、イライラや不安感などさまざまな種類があり、その程度には個人差があります(関連記事:人と比べるのが難しい生理の状態……「私の生理、受診が必要?」まずはセルフチェックを)。そのため男性だけでなく、女性同士でもつらさを十分理解できないことがあります。もしかすると同じ職場で働く女性も、つらい症状を抱えたまま仕事をしているかもしれません。

このコラムでは、2023年に東京都が実施した、働く女性約3,500人のアンケートに寄せられた、生理の痛みやつらい症状についてのリアルな声をまとめました。そしてそれらの体験談やお悩みに対して、産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂さんに、働く女性に向けたアドバイスと、職場や上司、同僚男性が気をつけたいポイントについて聞いていきます。

働く女性の声

※コメントは漢字や表現など一部変更しています。

  • 生理痛が陣痛並みに痛く、仕事に全く集中できない。立ち上がった際に子宮が鷲掴(わしづか)みにされるほどの激痛が走るため、電話やインターホンなどにスムーズに出られない。子宮筋腫による過多月経で、ナプキンが1時間持たず、服を何度も汚してしまう。仕事にならないから休みたいが、保育関係の仕事で人員不足のため休めない。自分の体がつらくても子どもたちには笑顔を絶やさないようにしてはいるが、涙が出るほどつらい。

  • 生理痛が重いが、顧客対応などでどうしても休みが取れないことがあり、無理して仕事をした結果、余計に体調の悪い時期が長くなり、会社で倒れたりした。でも、休みやすい仕事を選ぶと、大事なポジションの仕事を諦めることになってしまう。

  • 生理中の通勤で、腹痛や吐き気を我慢して満員電車に乗っていたところ、迷走神経反射を起こして倒れてしまった。始業に間に合わず、有給休暇を取得して対応することになった。

  • 生理痛がひどく、薬を飲んでも効かないときがあり、そんなときに一番重労働な日だったので上司に頼んで変えてもらったが、陰口を叩かれた。

  • 生理痛で急に休まざるを得なかったときなど、同僚に迷惑をかけてしまうと思うと、さらに精神的にもきつくなった。

  • 子宮内膜症により、生理時の出血過多で椅子に座ることが苦痛だった。でも休めない。貧血もひどく、通勤時もめまいがしたが、はうようにして出勤していた。生理休暇が取れたらあんな苦痛は回避できたかと思うと悔しい。現在は手術をして症状が落ち着いてきたが、あのつらさは思い出したくない。

  • 痛み止めを飲んでも生理痛でトイレから出られず、そのまま体が震え出して冷や汗が出てきて貧血になって倒れた。

  • 生理のつらさは個人差があるのに同性からパワハラされ、さらに症状が悪化、働けなくなり退職した。

  • 毎月、激しい出血があるのに、シフト制の勤務のため、休むのが申し訳なくて生理休暇を取得しづらい。何度も体調のことは会社には伝えているが、会社側はあまり理解してくれない。管理職は男性が多く、言いづらいし、そもそも理解する素地がないと思う。

  • PMSや生理中の頭痛で、トイレで嘔吐(おうと)してしまう。その後フラフラになりながら席に戻り、業務を続けていたが「顔が青白いよ」と同じ部署の女性から心配されることも。早退できるときは早退するが、他の人に業務のしわ寄せがいってしまうのが申し訳ない。

産業医・産婦人科医から

働く女性へのアドバイス

生理痛がつらいときは、我慢せずに早めに鎮痛剤を飲みましょう。効果的な飲み方は、「痛みがひどくなったら飲む」のではなく「痛みが出る前から飲む」です。鎮痛剤は痛みのもととなる「プロスタグランジン」の産生を抑えますが、すでにプロスタグランジンが大量に作られた後では、効果が出づらくなってしまいます。そのため、毎回、生理痛があるという人は、先回りして「経血が出たらすぐ飲む」、または予測できる場合は「生理が始まる1~2日前から飲む」とよいでしょう。

ただし1回の生理期間中につき3日以上、鎮痛剤が必要だという人は、子宮内膜症など婦人科系疾患の可能性もあるので早めに受診しましょう。子宮内膜症による痛みを我慢し続けていると、生理のとき以外にも慢性的な痛みに進展しまうこともわかっています。生理のつらい症状を我慢し続けても、何もいいことはないのです。気軽に婦人科を受診して、悪循環を断ち切ってほしいと思います。

職場と上司・同僚男性へのアドバイス

生理に伴う不快な症状には個人差があり、腹痛や腰痛、頭痛などの痛み以外にも、めまいや吐き気、下痢や冷や汗など、さまざまな症状があることを理解しておきましょう。そしてこれは生理に限らず、健康問題を抱えるすべての人々に共通することですが、つらそうな人が職場にいたら気遣ったり、休むよう声をかけたりすることが大切です。つらいときは休みたいと周囲に言える環境、困ったときには助け合える職場づくりは、モチベーションや生産性アップ、離職率低下にもつながっていくはずです。

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飯田美穂さん
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。