前回の記事では、生理中のつらい症状について紹介しましたが(関連記事:想像を超える生理中の痛み! つらい人のリアルな声とは?)、実は生理中だけでなく、生理前や排卵期にも不快な症状を抱えている女性は少なくありません。
実際、2023年に東京都が約3,500人の働く女性に実施したアンケートでは、生理に伴う不快な症状がある日を合計すると「月の約半分」というコメントや、中には「ほとんどの日がつらい」という声も寄せられました。これらの体験談やお悩みに対して、産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂先生に、働く女性に向けたアドバイスと、職場や上司、同僚男性が知っておきたいポイントについて聞きました。
働く女性の声
※コメントは漢字や表現など一部変更しています。
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生理前と生理中のイライラや気分の落ち込みで、周囲の人にも嫌な思いをさせていると思う。さらに排卵日前後の2~3日は頭痛があるため、不調のない日が毎月1週間程度しかなく、常に不調を感じている。
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30代後半からPMS(月経前症候群)の症状が重くなり、生理の1週間ほど前から頭痛、吐き気、だるさが続く。そして生理が始まると生理痛になるため、月のうち10日は体調が万全ではない。体調不良で仕事を休むこともあり、QOLが低下していた。現在は婦人科を受診し、漢方薬で対応しているが、自身に合う薬にたどり着くまでに時間もお金もかかった。
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生理痛、排卵痛、PMSで月のほとんどが不調なため、効率が下がったまま何とか仕事をしている。
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生理痛やPMS、PMDD(月経前不快気分障害)の症状があるため、低用量ピルを服用している。特に生理前は腹痛や情緒不安定がひどく、仕事に集中できない。以前、通勤中に車内で泣き出しそうになりながらも出勤したが、そんな日に限って忙しく、集中力が欠けていた私は、他の人が確認してくれたにもかかわらず判断ミスをしてしまった。相手が男性だったため「生理前で」などと説明もできず、関係がぎくしゃくしてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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1か月の半分以上は何らかの体調不良があるので、正社員を辞めて不安定な雇用環境で働かざるを得なくなった。
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毎月、生理前はメンタル不調と眠気がひどく、生理中は大量出血と腹痛、腰痛、立てないほどの貧血になる。数時間の会議でも経血が漏れたり、出勤途中に貧血で電車を降りたり、眠すぎて会社のトイレで寝たこともある。私の会社では管理職には生理についての研修があったが、管理職以下の男性社員になると、つらさや症状について知らない人が多い。そして私のようにPMSや貧血だと診断を受けていても我慢している女性は多く、特に独身女性の場合、ママ社員の仕事のしわ寄せがきて、残業や休日出勤にも耐えざるを得ない。
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生理前には絶望的な気分になってしまう。仕事も何もかもうまくいかないと感じながら、1週間の生理を迎える。そして排卵日頃になると発熱するので、月の半分は調子がままならない。子どもが小さいときは、自分だけでなく子どもの体調不良もあるので有給休暇が不足し、遅刻欠勤も生じて周囲に申し訳ない思いをした。
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女性が普通に調子がいいのは月に10日ほど。それ以外はホルモンバランスによる何らかの不調と闘いながら、何とかパフォーマンスを上げていることを、もっと知ってほしい。
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私の会社では生理休暇が連続する2日間しか取れないのを改善してほしい。周期によっては月に2回生理がくることもあるのに、1回目しか使えない。またつらい症状が2日連続ではなく「生理の1日目と3日目」という場合もあるし、「生理前と生理2日目の症状が重い」「排卵日がつらい」ということもある。
産業医・産婦人科医から
働く女性へのアドバイス
実際に診察していても、生理中の不調とPMS症状が両方あるという人はとても多く、排卵日頃の不調を訴える人もいます。別の症状で病院を受診した人でも、実は生理痛や生理前の不調で悩んでいるがやり過ごしている、というケースは多いです。一定期間を過ぎると一度は症状がよくなるため見過ごされがちですが、閉経を迎えるまで多くの期間のQOL(生活の質)を下げたまま過ごしてしまうことは、女性の人生にとって大きな損失です。ホルモン剤などで治療して症状が軽くなれば、仕事の質も、人生も変わってくるはずです。また生理日や症状を記録する習慣をつけ、自分自身で体調の変化を予測したり、スケジュールを調整したりするなど、対策をとっておくのもおすすめです。
職場と上司・同僚男性へのアドバイス
女性の生理周期(生理の開始日から次の生理の前日までの日数)は個人差があり、正常な生理周期は25~38日とされています。そのため毎月、同じ日に生理がくるというわけではなく、月に2回という場合もあるので「生理でつらい日や、生理休暇は月に1回」などと決めつけるのは誤りです。また女性自身も次の生理開始日や、生理前の不調が始まる時期を正確に予測することは難しく、仕事に支障をきたしてしまうことに罪悪感を覚える方もいることを知っておきましょう。
生理期間は3~7日が平均的ですが、それ以下やそれ以上という人もいます(過短月経、過長月経)。生理中は、腹痛や腰痛、頭痛、吐き気、倦怠感などの不快な症状に悩む女性が多くいます。生理が終わり、約2週間後の排卵期には、排卵痛や出血などを不快に感じる場合があります。そして生理前の3~10日間は、情緒不安定やイライラ、倦怠感、頭痛などのPMS症状に悩まされる人がいるのです。そのため、生理による不快な症状が7日間、排卵に伴う症状が3日間、PMS症状が10日間という人だと、月のうちおよそ20日間が不調であるということになります。ホルモンの働きによって、女性の体調は毎月大きく変動すること、症状や程度に個人差があることをぜひ理解してください。

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。