女性の健康課題別体験談 Experiences

更年期症状で汗が止まらず、恥ずかしくて会議で積極的になれない

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急に顔が赤くなる、汗が止まらなくなる、上半身を中心に暑くなる、急激なのぼせを感じる……これらのホットフラッシュと呼ばれる症状は更年期に多く見られ、働く女性にも影響を与えています。産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂先生に、働く女性に向けたアドバイスと、職場や上司、同僚男性が知っておきたいポイントについて聞きました。

働く女性の声

※コメントは漢字や表現など一部変更しています。

  • 手もとに書類を置けないほど、仕事中に汗がとめどもなく滴り落ちてきて困った。頻尿や不正出血など他の更年期症状もあったが、男性上司には言いづらかった。同年代の女性でも症状には個人差があるので、自分だけ我慢すれば良いと耐えていた。

  • エアコンがきいた会議室なのに、更年期症状で一人だけ汗びっしょりになってしまった。拭いても拭いても汗は止まらず、下着が透けるほど服が濡れてしまい、恥ずかしい思いをした。こうした状態が頻繁に起きるので、注目されないよう、会議などでの発言が減ってしまった。

  • 更年期障害による発汗がひどく、本来は早めに出社して、仕事を始めるまでに一息つく時間を取りたいが、非正規社員が早めに出勤することは職場で好まれないため、わざわざ近くのカフェに寄っているが、カフェから職場に移動する間にまた発汗してしまうこともあり、困っている。

  • 私の場合、1時間に5分間ほど、ひどいホットフラッシュ症状が定期的に出る。社内でも指摘されるため、とにかく周囲に気を使う。男性には理解しづらいことと諦め、常に我慢しながら業務についている状況。

  • ほてりや発汗があるので、職場が暑く感じられ、冬でも薄着にしたりハンディファンを使用したりして何とか対処しているが、若い職員は手足が冷えているようで、共存が難しい。

  • 更年期のため職場の空調温度が合わず、汗疹を発症してしまい皮膚科に通院。悪化して全身掻痒症となり、現在は投薬治療しているが、つらい思いをしている。

  • ホットフラッシュの症状があるが、職場では長袖の着用を強制された。またメンタルヘルスの不調を訴えても上司には受け入れてもらえず、聞いていないことにされてしまった。

  • 更年期症状でホットフラッシュがひどい時は、ミニ扇風機などを首からかけて仕事をしていた。また眠さや倦怠感が強い時は上司に理由を話してシフトを調整してもらい、出勤日数を減らして調子の良い時に出勤させてもらったりした。

  • ホットフラッシュの症状が出ると、汗が顔に流れ、お客様の前に立つどころではなくなるので、サービス業としては苦痛に感じる。

  • 更年期症状で作業着がびしょびしょになるほど汗が大量に出たが、空調設備のない現場でつらかった。

  • 以前は更年期によるホットフラッシュで冬でも汗だくになり、恥ずかしい思いをしていたが、今はホルモン治療で軽くなった。

  • 私は更年期症状でホットフラッシュや動悸などがあるが、職場でワンオペの時間帯があり、もし倒れたらと不安になる。会社は更年期を軽視しているとしか思えず、改善してほしい。

産業医・産婦人科医から

働く女性へのアドバイス

ホットフラッシュは、更年期にエストロゲンの分泌量が急に減少することで、それをコントロールしている脳の自律神経や体温調節機能が乱れ、わずかな体温の上昇や刺激に対して身体が反応する現象です。そのためホルモン補充療法(HRT)でエストロゲンを補うことが非常に効果的で、多くの患者さんが1か月ほどで症状の軽快を実感します。HRTは健康保険が適用されるので、自己負担が少なく治療が可能です。仕事や生活に支障をきたすようであれば、「たかが汗」などと思わず、気軽に婦人科を受診しましょう。また首すじを冷やすデバイスなど、ホットフラッシュ対策のフェムテック製品の活用や、辛い食べ物やアルコールなどの刺激物を避けること、適度な運動を習慣にすることなど、セルフケアも有効です。なお、ホットフラッシュを自覚する患者さんの中には、高血圧や甲状腺の異常が隠れているケースもあります。病院で検査してもらうことが大切です。

職場と上司・同僚男性へのアドバイス

職場が寒い場合は、重ね着やカイロを使うなど、ある程度個人で対策をとることもできますが、ホットフラッシュで暑くなってしまう場合、薄着には限界があるため、対策はより難しいといえるでしょう。そのためエアコンなどの室温設定は、ある程度個人で自由にできる職場が望ましく、制服がある職場の場合も安全性の問題がなければ、半袖など選択肢の幅があると、より働きやすい環境になると思います。実際に、自分で温度調節ができる職場では生産性が上がる、という研究データも報告されています。

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飯田美穂さん
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。