女性の健康課題別体験談 Experiences

セクハラ・パワハラのおそれも「私が職場で言われて嫌だったコメント集」

生理による症状が重く、仕事に支障が出てしまう場合、女性従業員が生理休暇を取得することは、労働基準法で定められた権利です(関連記事:生理休暇を取りやすくするためのアイデアや注意すべきポイントとは?)。企業が生理休暇の取得を認めなかったり、無理に働かせた場合、30万円以下の罰金も規定されています。しかし実際の職場では、上司などが休暇取得を高圧的に阻むパワハラ的な発言や、セクハラまがいの言動も見受けられるようです。生理や更年期などの健康課題について、同僚が揶揄(やゆ)したり、陰口を言うケースもありました。こうした発言は本人を傷つけ、意欲を大きく低下させてしまうだけでなく、職場全体の雰囲気や環境にも悪影響を及ぼします。また健康課題に対するプライバシーへの配慮を職場に求める声も寄せられました。職場で言われて嫌だったコメント例とともに、産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂先生のアドバイスを紹介します。

4コマ漫画。書類を提出する女性。男性「生理休暇…え…50過ぎても生理ってまだあるの?」場面変わって会議中。「このデータでそう判断するのは早いのでは?」と発言する女性。それに対して「今日は随分と切り込むねぇ もしかして…更年期?なんつって」と冗談めかして返す男性。再び場面変わって、屋上で女性が手すりにもたれかかりながら「私も…何を言っても許されるってこと?」と怒っている。その背中を見ながら「やばい…止めなきゃなのに応援しちゃいそう…」と思っている男性
漫画/さわぐちけいすけ

働く女性の声

※コメントは漢字や表現など一部変更しています。

  • 「“生理痛のため休みが欲しい”なんて言うけれど、我々管理職のストレスの方がずっとつらいんだよ」と男性上司に言われた。生理痛を味わわせてやりたい。

  • 「生理休暇は査定に響くから取得しないように」という、アドバイスぶった強制指示。

  • 入社時、生理休暇の説明は受けたが、同時に「実際に取得している人はいない。それほど症状がひどい人は辞めている」と説明された。

  • 生理休暇を取得するたび「今回も○日周期だね、来月は○日頃かな?」等、上司に勝手に生理日を計算され、ニヤニヤされる。セクハラが横行している職場では、生理休暇の取得はハードルが高い。女性従業員は子育てや介護問題を抱えている人も多いし、生理休暇という形ではなく、有給休暇の上限を増やすなど、国が考えてくれればいいのにと思う。

  • 生理休暇を取ろうとすると、男性上司に「寝たら良くなるんじゃない?」と言われる。また生理中は、痛みだけでなくお腹もゆるくなるため、職場のトイレから出られない時があるが、席に戻ると「トイレが長い」と指摘される。

  • 前の会社で生理休暇を申請したら男性上司に「頻繁に取らないようにな!」と言われた。男性社員に直接話すのではなく、休暇申請をシステムでできるようにしてほしい。

  • 生理休暇など生理関連のことを話すと、男性上司が恥ずかしそうな顔をするので、こちらも嫌な気持ちになる。そういう態度こそセクハラと感じられることを、勉強してから昇進してほしい。人間のからだのしくみについて、社会全体でもっと理解が深まったらいい。

  • 経血量が多い日は頻繁にトイレに行く必要があるが、男性上司に「急ぎの件があるから、ちょっと待ってて」と呼び止められ、そのまま立って待たされることが多く、実はヒヤヒヤしている。「戻ったら声をかけて」と言ってくれれば、だいぶ違うのだが。

  • 通勤中に激しい生理痛に襲われ、駅の救護所を借りるほど具合が悪くなったので、会社に連絡したら「他の人からも休むと連絡が来たから、途中まで来てるなら出社して」と言われた。その後、検査のための休みを申請すると、上司に「なんで何回も休む必要があるのか」と聞かれ、他の従業員もいる前で、子宮内膜症であることを話さざるを得なくなった。

  • 職場で「更年期ババア」といった中傷を影でされる。

  • 私の更年期症状に対して「ご年齢がご年齢だけにね」など、嫌な言い方をされた。

産業医・産婦人科医から

女性特有の健康課題については義務教育などで学ぶ機会が少なく、症状を経験し得ない男性は理解が不足していたり、また同じ女性でも症状が軽い場合には共感しにくい場合があり、つらい症状を抱える女性従業員に対して心ない発言をしてしまうケースもあると考えられます。しかし働きやすい職場づくりのためには、「自分は男性なので(または症状が軽いので)わからない」と終わらせてしまうのではなく、是非、こうした啓発記事や動画などで知識を得てほしいと思います(関連記事:【アーカイブ動画公開中】女性の生理と更年期の悩み 知識をつけて働きやすい職場に!)。

働く女性に対し、上司や同僚から「自分は実際の痛みやつらさはわからないけれど、大変な場合は無理をしないように」といった気遣いや配慮があると、心理的安全性が高まり、モチベーションやパフォーマンスの向上につながることも意識してほしいです。チーム全員が気兼ねすることなく、ありのままの自分の意見を言い合え、受け入れられる状態になれば、正しい知識や情報をもとに意見交換しながら、よりオープンに話し合えるようになるでしょう。

女性特有の健康課題については悩みを一人で抱えている人も多いですが、社会の中で周囲から支えられていない人、ソーシャルサポートを得られていない人は、メンタル面で悪影響が出やすいという研究もあります。健康課題について咎めたり非難するのではなく、サポートし合うことで、うまくコーピング(対処)しやすくなる、お互いがクッションになり得るような職場づくりを目指してほしいと思います。

飯田美穂さん写真
飯田美穂さん
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。