働きやすくなった! 私の会社に導入されて良かった制度・フェムテック
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東京都の調査では、女性特有の健康課題への対策やサポートについては「何をすればいいかわからない」と回答した企業が最も多く、27.5%でした(関連記事:生理やPMS、更年期……職場における女性の健康課題を徹底調査 )。しかし取組が行われている職場の女性からは、働きやすくなったという多くの声が寄せられています。産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂先生のアドバイスとともに紹介します。
- ※さまざまな支援を行っている企業を取材した「企業の取組事例」も是非ご覧ください。
働く女性の声
※コメントは漢字や表現など一部変更しています。
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女性の健康についてのオンライン研修が行われたおかげで、男性上司のセクハラまがいの発言がなくなり、生理休暇を取得しやすくなった。
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オフィスがフリーアドレスになったため、生理の時に冷房がきつい席を避けられるようになった(逆に更年期の人は涼しい席を選んでいると聞いた)。また以前は、喫煙所に頻繁に行く人の席が近く、生理で頭痛や吐き気がつらい時、タバコの残り香で吐きそうになっていたが、煙害を避けられるようになったのも大変有り難い。
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会社のトイレに無料で生理用ナプキンを使用できるフェムテックが導入され、低用量ピルのオンラインサービスの費用補助も始まった。女性が生理用ナプキンのために生涯で使う金額は数十万円という試算を読んだことがあり、仕事をする上で、女性だけが負担せざるを得なかった生理用ナプキンや低用量ピルを、会社が補助してくれるのは嬉しいと思った。
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私の職場には、体調不良の時に取得できる休暇制度が、有給休暇とは別に用意されている。これは性別問わずさまざまな不調のために利用されているため、生理による体調不良の際も、周囲の目を気にせず休みが取れる。
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在宅勤務が定着したため、生理用品不足やお手洗いの頻度、経血漏れの心配がなくなった。また空調も自由に調整できるため、生理の不快な症状があっても格段に働きやすくなったと思う。
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婦人科の治療支援制度を会社が設けたことで、治療に行きやすくなり、仕事も休みやすくなった。周囲も自然と受け入れてサポートするようになり、チームワークが良くなったと思う。
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女性専用の休憩室があるおかげで、生理でつらい時に体を休めることができ、何度も救われている。
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会社が契約した婦人科のオンライン診療を受けたところ、病院での受診を勧められ、子宮の病気であることが分かった。生理痛が重いのは遺伝だと思っていたが、会社のおかげで早期に治療を開始でき、とても感謝している。放っておいたらもっと重症化し、不妊につながったかもしれないと聞き、人生が変わったと思う。
産業医・産婦人科医から
日本では女性の労働力人口が増え続けており、特に生理がある年代で、働く女性の割合が増えています(総務省統計局「労働力調査」1989年と2019年を比較)。そして出産回数の減少などライフスタイルの変化により、生涯で経験する生理の回数が増えているため、女性の負担は身体的にも経済的にも高まっているのです。東京都の調査では、生理痛により仕事に支障が出ている女性が過半数という結果も出ており(関連記事:生理やPMS、更年期……職場における女性の健康課題を徹底調査)、職場における女性特有の健康課題への支援は、待ったなしの状況にあるといえるのではないでしょうか。職場全体でヘルスリテラシーを高める研修や、女性特有の体の悩みに対応した制度・環境の整備、全社的に取り組む雰囲気づくりなど、まずはできることから始めてほしいと思います。女性の健康を支援する取組が一部の企業に限定されるのではなく、業種や企業規模を問わず大きく広がれば、生産性やエンゲージメントが向上し、さらには女性が快適に働き続けられる社会づくりにもつながるはずです。

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。