乳がん、子宮がんなど「婦人科系がん」と仕事の両立の難しさ
副作用や職場の無理解に悩む声
乳がん治療と仕事の両立の難しさ、職場への伝え方に迷う声、抗がん剤の副作用、休職・職場復帰後の働きづらさ、子宮がん手術後の悩み……。婦人科系がんを患った働く女性が直面した悩みについて、多くの声が寄せられました。産婦人科医・産業医として女性の健康支援に取り組む飯田美穂先生のコメントとともに紹介します。
抗がん剤の副作用など、がんと仕事の両立で起こる悩み
※コメントは漢字や表現など一部変更しています。
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乳がんの抗がん剤治療による体調不良や脱毛で出社できない。自分に自信が無くなっている。
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乳がんの薬を服用しているからか、生理のたびに右の首や肩あたりに激痛があり、鎮痛剤を飲んでも通常用量では痛みに耐えられないため、量を増やして勤務している。代替の人が手配できないので、つらくても仕事は休めない。
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抗がん剤の治療をしながら仕事を続けることが難しく、結局、退職するしかなかった。
職場への伝え方に迷う声
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私はこれからがんの治療に入るが、女性特有のがんのため職場や周囲に伝えにくい。
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乳がんが再発し治療中だが、勤務先には病気のことを伝えていない。3週間ごとの通院と年4回の検査、病気の不安と子育てとの両立、社会参加への難しさがあり苦しい。
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同僚の女性が乳がんの治療で女性ホルモンを止め、更年期障害のような状態になった。私には相談してきたが、男性の同僚には「弱みを見せたくない」と、無理をして働き続けていた。するとメンタルの不調も出てしまった。被害妄想が激しくなってきて、話を聞いている私まで参ってしまったが、とにかく否定をせず、話を聞いてあげるようにした。彼女は会社にとって必要な人材だし、本人も本当はバリバリ働きたいからこそ苦しんでいると思い、励まし続け、数年たってやっと落ち着いてきた。あの時は「いい加減にして!」と言いたくなるほど、こちらも本当につらかった。
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私は女性特有のがんに罹患し、メンタルも崩して休職した経験がある。女性特有の健康課題をオープンに話せる環境や、周囲の理解が進み、キャリアを諦めずに働きやすい社会になることを祈っている。
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腹痛はあったが自己判断で通院しなかったら、数年後に女性特有のがんだったことが分かり、会社を辞めることになった。もっと早く自分の身体に向き合い、病院に行くべきだったと思う。
復帰後、職場の配慮の無さに苦しむケースも
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40代の終わり頃、乳がんの手術をした。1週間入院した後、仕事に復帰し、放射線治療のため2週間は時短勤務にしたが、職場が業務量などを配慮してくれることは全くなかった。
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乳がんの術後にも、仕事で重いものを運ばされている人がいて、職場でのフォローや配慮が足りないと思った。
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子宮体がんの手術後、お腹に力が入らないので力仕事ができなくなり異動希望を出した。
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子宮がんになった派遣社員が退職した。派遣社員でも辞めずに、治療と仕事が両立できる方法があればいいのにと思う。
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子宮体がんの手術で子宮を全摘出したため、更年期障害のような症状が出てきた。手のこわばりなどで仕事の処理スピードが落ちてしまい、大量の仕事がたまってしまったが「残業は禁止だから」の一言だけで片付けられたのはとても困った。
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乳がんの治療後、抗女性ホルモン剤を飲むことになり更年期障害が一気に進んだ。汗が止まらなかったり、夜中に暑くて起きてしまい眠りが浅くなったりするため、仕事に支障が出る。しかし会社は産休や育休の制度はあっても、更年期の女性やがんサバイバーへの対応は何もない。
産業医・産婦人科医から
がんサバイバーとして治療と仕事を両立する人は増えていますが、婦人科系のがんに関しては、職場に相談しにくいと感じる人が多くいます。卵巣や子宮摘出による生殖機能の喪失や、乳房を切除することで感じる精神的な影響など、「女性性」に関連する悩みや苦しみは、他の臓器のがん以上に、職場で開示すること自体が大きな負担になることもあります。周囲の方は、そうした背景を理解し、十分に配慮してほしいと思います。
女性のがんで最も罹患率が高い乳がんは、日本人女性の9人に1人がかかるといわれており、発症年齢も働き盛りの40代後半からがピークです。働く女性が増えた今、職場でも、がんの治療中には抗がん剤によってさまざまな副作用が出る場合があること、治療後も一定期間の経過観察が必要なこと、女性ホルモンが減少して更年期のような症状が出る場合もあることなどを、研修などで理解を深めることが必要ではないでしょうか。
また、両立支援の制度が整備されてきたとはいえ、多くの場合、本人からの申し出がなければ支援が始まらない仕組みになっています。特に非正規雇用などの不安定な立場では、治療について職場に伝えるハードルが高くなりがちです。働く女性は一人だけで抱え込んでしまわず、気の置けない同僚や話しやすい人事労務担当者など、まずは味方になってくれる理解者がいないか探してみてください。産業医や産業保健職がいる職場であれば、医学的な視点を踏まえながら、働き方の調整などを一緒に考えられますので、ぜひ相談してみましょう。そうした専門職が配置されていない職場の場合には、通院先の医療ソーシャルワーカーに相談してみるのも一つの方法です。
会社にいつ、何を、どの順番で、どこまで話したらいいかは、治療の内容や立場によっても異なります。がん拠点病院では「がん相談支援センター」、総合病院では患者相談センターなどでソーシャルワーカーが相談に乗り、必要に応じて他の専門家につないでくれるでしょう。また復職後に職場に配慮を求めたい場合は、「療養・就労両立支援制度」を活用し、主治医から職場に配慮が必要なポイントなどの意見書を出してもらう方法もあります(関連記事:乳がん治療をしながら仕事を続けるには? 職場への伝え方や注意点などを専門家が解説)。
最後に、働く女性にはぜひ、国が推奨しているがん検診を受けてほしいと思います(関連記事:子宮頸がん・乳がんはいつから検診すべき? 女性の年代別に必要な検診と受け方を解説)。その上で、不正出血や乳房などに違和感があった場合には、早めに医療機関に相談することが大切です。
2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。