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「閉経前」の生理の変化とは? 働く女性が抱える、閉経をめぐるトラブル

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いつから閉経するのか、閉経前にはどんな体調の変化があるのか、50代で生理が不安定になるのは普通なのか……「閉経前」についての情報は少ないので、不安を感じている女性は多いのではないでしょうか。一方で、周囲も含め「閉経が近くなると生理の不調は軽くなっていくはず」「生理が終わるので楽になるのでは」と楽観視している人もいるかもしれません。

閉経とは、最後の生理から1年以上生理がなく、生理が完全に停止した状態のことで、日本人の平均的な閉経年齢は50歳前後です。閉経前には、それまで生理が安定していた人でも、生理周期や出血量が不安定になることで仕事に支障が出るなど、さまざまなトラブルを抱えるケースもあります。産婦人科医・産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂先生のアドバイスとともに、働く女性たちのリアルな声を紹介します。

四コマ漫画。1コマ目:更年期により乱れる体調。「経って穏やかに来るんじゃないのお?」とお腹を抱えて痛がる女性A。2コマ目:出勤途中に突然の出血。「先週の生理は何だったの?」と戸惑う女性B。3コマ目:まったく予測できない生理周期。「元気だった?」と生理がいきなり来た。「お前が来るまではな!」と女性C。4コマ目:閉経も人それぞれ。女性A・女性B・女性C「そんな多様性はいらん!」
漫画/さわぐちけいすけ

働く女性の声

※コメントは漢字や表現など一部変更しています。

生理周期が不安定になり仕事に支障、大量出血も

  • 閉経する時は、徐々に生理の回数と経血の量が減っていくのだろうと思っていたが、実際には閉経前の数回の生理は多量で非常に大変だった。

  • 更年期に入り、これまで乱れることのなかった生理周期が乱れ始めた。1週間前に生理が終わったはずなのに出勤中に急に再開、しかも大量出血でスカートを汚してしまった。よりによって履いていたスカートがベージュで血の染みが目立つので、会社には遅刻する旨連絡し、バッグでお尻を隠しながら自宅まで引き返し、着替えてから出社しなければならなかった。

  • 更年期で生理の周期が定まらず、仕事中に突然、生理が来てしまうので困った。怖いので5年くらいの間、黒系のスカートやパンツしかはけなかった。制服のない職場でよかったと思う。

  • 閉経前は不規則な大量出血があり、ナプキンだけでは間に合わない状態になったり、重い貧血になったりすることが、もっと周知されてほしいと思う。相談しづらいので、仕事中にトイレに行けず不安になったり、経血が漏れてしまったりしていた。

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いつ閉経するのか、いつまでこの状態が続くのか…人知れず抱える不安

  • 1カ月間も重い生理のような状態が続き、病院で検査しても何もなく、清掃の仕事をしているので体力的にとてもつらかった。3軒目の病院でようやく、閉経へ向かう途中でホルモンバランスが崩れていると分かり、治療を始められた。

  • 更年期前半は何年も重い過多月経で、ショーツ型ナプキンと夜用ナプキン、体に付けるタイプの生理用品の三重装備で、何とか数時間の会議をやり過ごしていた。誰にも相談できず、早く閉経することを何年間も願っていた。

  • 私は50歳の時に最後の生理が来て閉経したと思っていたら、2年後の52歳の時にまた来て驚いた。不安になったので久しぶりに婦人科に行ったら、そういうケースもたまにあるとのこと。生理用品もすべて処分した後、50代になってまた買い直すなんて……。女性の体は本当に面倒だと思う。

産業医・産婦人科医から

実はこれまで「閉経への移行」については、十分に実態が捉えられてこなかった面がありました。しかし最近になって世界的にも注目が集まり、閉経前後には実にさまざまな経過がある可能性が明らかになってきています。

例えば、従来は「女性ホルモン(エストロゲン)は緩やかに減っていく」と考えられてきましたが、実際には上下に非常に激しく変動します。一時的にエストロゲンの分泌が多くなると子宮内膜が厚くなり、コメントにもあるように、経血量が急に増えることがあります。また閉経前は生理周期が短くなり、貧血になることもあれば、その後、周期が長くなり「もう生理はなさそう」と思っていたら突然出血することもあります。すると備えがないまま、仕事中などに大変なことになってしまうのです。注意して頂きたいのは「閉経後に生理が復活した」と感じる場合です。これは生理の経血ではなく、がんなどによる不正出血の可能性もあるので、自己判断せず、必ず婦人科を受診してほしいと思います。

また「閉経後は楽になるはず」と思っていたのに、その後GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)や子宮脱などの不調が出てきて、「オフィスで長く座っているのがつらくなった」という方もいます(関連記事:更年期以降のデリケートゾーンのヒリつきや違和感は「GSM」 生産性低下やうつも招くが、一日たった数分のケア習慣で改善!)。「閉経」や「閉経後」については学校教育などで学ぶ機会もないので、多くの人が十分な知識がないまま、突然困惑してしまうのが現状です。生理や更年期だけではなく、閉経後の健康についても知り、適切な生活習慣などで備えてほしいと思います。

実は研究の世界でも、閉経前後の時期を正確に捉えることは簡単ではなく、女性自身の体験が十分に反映されてこなかったという課題があります。だからこそ、日々の体調や生理の変化を記録し、それを医療や研究につなげていく仕組みづくりも重要だと考えています。

  • 子宮脱…妊娠・出産や肥満、加齢などにより子宮の位置が下がり、腟から外に出てしまう症状。
飯田美穂さん写真
飯田美穂さん
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師

2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。