働く女性を襲う激痛、大量出血──子宮筋腫・子宮内膜症と仕事の両立のリアル
経血量が多いため漏れが心配で電車で座れない、出張先へのスーツケースの半分が生理用品、治療の副作用で真冬でも汗が噴き出す──。働きながら子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症などと向き合う女性たちは、職場でそのつらさを言えず、我慢を強いられがちです。そんな誰にも言えない激痛や深い悩みの実態と、早期受診・治療の重要性について、当事者の声と、産婦人科医・産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂先生のコメントを紹介します。
働く女性の声
※コメントは漢字や表現など一部変更しています。
誰にも言えなかった、子宮筋腫の影響と手術前のつらさ
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子宮筋腫が2つあり、生理のたびに大量の出血や痛み、貧血に悩まされたが、「閉経したら楽になる」と言われたので、本当につらかったものの何とか数年をやり過ごした。ただ若く、閉経が何年も先になりそうな人であれば、まめに受診して経過を見て、必要な場合は手術をした方がいいのではと感じている。
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子宮筋腫を治療する前は、生理の出血がかなりひどく、夜用の一番吸収量の多いナプキンが1時間持たないほどだった。会議中は漏れが気になってそわそわしていたし、明るい色の服は着られなかった。何度も服や椅子などを汚してしまったので、染み抜きやウェットティッシュ等の携帯が必須で、通勤電車でも座ったら漏れるのではと、立ちっぱなしで過ごすしかなかった。1時間ごとにトイレに行くので周りの目も気になったが、仕事を休むわけにもいかず、生理の6日間のうち4日間は気が気でなかった。
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子宮筋腫の手術前に、女性ホルモンを抑える注射を毎月打たなければならず、ホットフラッシュや気分の落ち込みなど、更年期のような副作用が出て、仕事中にとてもつらかった。また手術のために1カ月間の休職が必要で、そのやりくりにも苦労した。
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子宮筋腫の手術前、ホルモン抑制剤の副作用に苦しみながらのフルタイム勤務がきつかった。ホルモン抑制剤は人工的に更年期状態にするため、ホットフラッシュで冬でも汗が出た。男性が多い職場だったため、治療について言い出しづらく、ただただ耐える日々だった。
もっと早く治療していれば……子宮内膜症、子宮腺筋症の激しい痛み
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子宮腺筋症と診断されるまでの5年間、重度の貧血で治療を行っていたが、仕事が手につかないほどの息切れや体調の悪さに悩まされていた。出張の多い仕事なので、生理と出張のスケジュール調整がとても大変で、スーツケースの半分は生理用品ということもあった。私の場合、貧血は生理の出血量が多かったことが原因だったのだが、健康診断後の再検査では、内科で「貧血の原因は体質」と診断されていたし、自分でも生理の量が普通なのかどうかわかっていなかった。その後MRI検査を受けて子宮腺筋症と判明し、低用量ピルを服薬して生理を止めたら半年で貧血は改善し、体調も完全に復活、出張も楽に行けるようになった。もっと早めに診断がついていればよかった。
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子宮内膜症のため、生理中だけでなく、生理でない時も下腹部痛が非常に強かった。生理痛すら申告しにくいのに、子宮内膜症は生理の時以外も強い痛みがあることを、同じ女性にもわかってもらえず、嘘をついているようで苦しかった。
産業医・産婦人科医から
「子宮筋腫」とは子宮にできる良性の腫瘍で、30代女性の約3割、40代では約5割に見られるとも報告されており、非常に頻度の高い疾患です。筋腫があっても症状がない場合もありますが、発生する場所や大きさによっては経血量の増加や貧血、頻尿などの原因となります。特に子宮の内側に近い粘膜下筋腫では、小さくても経血量が増加することがあります。
一方、「子宮内膜症」は、子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所で増殖する病気で、「子宮腺筋症」は同様の組織が子宮の筋肉内で増殖する病気です。どちらも強い生理痛や慢性的な下腹部痛、腰痛の原因となり、特に子宮腺筋症では経血量の増加を伴うことも少なくありません。また、子宮内膜症や子宮腺筋症は不妊や流産・早産との関連も知られています。これらの疾患が疑われる場合、婦人科では問診や内診、超音波検査などを行います。
注意したいのは、「子宮がん検診では異常なし」と言われても、超音波検査を受けていなければ、これらの診断に至らないことがある点です。経血量が多い、強い生理痛があるなどの症状が続く場合は、一度、婦人科を受診することをおすすめします。
治療法は症状の程度や年齢、妊娠希望の有無などによって異なります。ホルモン治療では、経血量や痛みを軽減し、病気の進行を抑えることが期待できるほか、鎮痛薬や鉄剤が用いられることもあります。手術が検討されることもありますが、お腹を切る開腹手術のほか、傷口が小さい腹腔鏡手術や、腟から子宮内にアプローチをする子宮鏡手術など、手術の術式によって入院期間や術後の回復も異なります。また、手術前に生理を一時的に止めるために行われる偽閉経療法(女性ホルモンの分泌を抑え、一時的に閉経に近い状態にする治療)では、ホットフラッシュや発汗など、更年期症状に似た副作用が現れることで、仕事や日常生活に影響が及ぶこともあります。
今回ご紹介した体験談からもわかるように、こうした症状は周囲から見えにくいことが大きな特徴です。生理の時の出血は、排尿や排便のように自分の意思でタイミングを調整したり我慢したりすることはできません。特に出血量が多い場合には、常に「漏れてしまうかもしれない」という不安を抱えながら仕事をしている方もいます。しかし、生理や婦人科疾患の症状は職場で打ち明けにくく、一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。
「生理でつらいのは当たり前」と我慢し続ける必要はありません。近年は症状を和らげたり病気の進行を抑えたりする治療の選択肢が増えてきました。経血量が多い、生理痛がつらいなどの症状が仕事や日常生活に支障をきたしている場合は、ぜひ婦人科で相談してみてください。そして、職場の上司や同僚を含め、こうした疾患が女性の仕事や生活に大きな影響を及ぼすことがあることを知っていただくだけでも、当事者にとっては大きな支えになると思います。
2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。