生理やPMS、更年期……職場における女性の健康課題を徹底調査
東京都では、働く女性が抱える健康課題と職場の実態について明らかにし、女性だけでなく企業の意識も高めることで、働く女性のウェルネスを向上させることを目指し、都内の企業と女性従業員に対して調査を行いました。その結果、生理や更年期症状による仕事への影響や、職場でのサポート・配慮状況、フェムテックの活用状況、そして働く女性と企業の意識ギャップなど、さまざまなデータから実態や課題が明らかになりました。産婦人科医であり、産業医として女性の健康支援に取り組んでいる飯田美穂さんのコメントとともに紹介します。
- Webアンケート方式。調査期間:2023年5月8日~6月30日。
- 企業用アンケート:回答数207。
- 従業員用アンケート:回答数3,646、うち雇用形態が「わからない・答えたくない」「その他」「未就学・学生」を除いた「働く女性」は3,565。
- Data 1 : 生理痛で仕事に支障が出ている女性が過半数
- Data 2 : 生理痛で困ったときの対策1位は「鎮痛剤」、「生理休暇」よりも「有給休暇」の取得率が高い
- Data 3 : 生理休暇を取得できない理由は「使っている人がいない」「上司などに言いづらい」
- Data 4 : 生理休暇が法律で定められた権利であることを、働く女性の半数強は知らない
- Data 5 : 職場に「生理休暇がある」と回答した非正規社員は、正規社員の約半数
- Data 6 : 40代以上の働く女性の約半数に更年期症状による仕事への支障が
- Data 7 : 更年期症状に対して何らかの対処をして仕事をする人が約4割
- Data 8 : 更年期症状がつらくて休んでも「更年期で」と言わない人が8割
- Data 9 : 女性特有の健康課題により、3割の女性がキャリアアップを諦めている
- Data 10 : 「諦めた原因」は、生理痛やPMS、メンタルヘルスや更年期、不妊治療などさまざま
- Data 11 : 女性特有の健康課題を解決する「フェムテック」の活用も望まれている
- Data 12 : フェムテックを活用している企業はわずか3%、今後の導入予定も4%にとどまる
- Data 13 : 活用していない企業の半数以上は「フェムテック導入の要望がない」と回答
- Data 14 : 女性の健康支援への課題は「何をしたらいいかわからない」が最多
- Data 15 : 働く女性が職場に望むサポートの1位は「上司・周囲の理解」
Data 1 : 生理痛で仕事に支障が出ている女性が過半数

働く女性に生理痛の程度について聞いたところ「1日以上寝込み仕事ができない」と回答した人は4.5%、「横になって休憩したくなるほど仕事への支障をきたす」人は22.6%でした。合計すると27.1%の人が、業務を行うのが困難なほど重い症状に苦しんでいることがわかります。また「仕事に若干の支障あり」という人は30.3%だったので、57.4%の働く女性が、生理痛によって仕事に影響が出てしまっているのです。
Data 2 : 生理痛で困ったときの対策1位は「鎮痛剤」、「生理休暇」よりも「有給休暇」の取得率が高い

生理痛によって女性の6割近くの仕事に支障が出ていることがわかりましたが、生理痛で困ったとき、最も多く取られている対策は「鎮痛剤を飲む」で77.8%でした。2位は「有給休暇を取得する」で17.0%。「生理休暇を取得する」という人は5.1%だったので、生理による体調不良であるにもかかわらず、生理休暇ではなく有給休暇を利用している人が3倍以上いるということが明らかになりました。そして4位は「ピルを服用する」で8.7%。低用量ピルは、月経困難症や子宮内膜症の治療に保険適用で使用されている薬で、服用している人が1割近くいることがわかりました。
-
飯田美穂先生のコメント
生理の症状で日常生活に支障が出る場合、「月経困難症」と診断されます。そのため、Data 1で、「1日以上寝込み仕事ができない」、「横になって休憩したくなるほど仕事への支障をきたす」と回答した27.1%の人は、月経困難症を抱えている、と考えてよいでしょう。痛みの原因として、子宮内膜症などの疾患が隠れている場合と、そうでない場合があります。いずれの月経困難症の治療も、鎮痛剤や低用量ピルを含むホルモン剤などの処方が保険適用で行われますが、比較的短期間で「症状が軽くなった」、「我慢せずにもっと早く受診すればよかった」という方が多くいます。「仕事に若干の支障あり」という人も含め、ぜひ婦人科で相談しましょう。
Data 3 : 生理休暇を取得できない理由は「使っている人がいない」「上司などに言いづらい」

生理痛があるのに生理休暇を取得していない人に、その理由を聞いたところ、一番多かった回答は「使っている人が少ない・いない」で44.9%、2位は「上司や周りに言いづらい」で35.5%、3位は「雰囲気として取りづらい」の32.8%でした。本当は生理休暇を利用したくても、女性同士の目や上司、職場の雰囲気など、周囲に遠慮して使うことができない現状がうかがえます。そして4位は「会社の就業規則(制度)にないから取得しづらい」で22.0%。次いで「人員不足で休めない」(21.7%)、「仕事が多忙」(21.0%)が続き、自分の体調よりも、会社や仕事の都合を優先して我慢している人もいるようです。「その他」(11.1%)の自由回答では「生理休暇が無給のため」というコメントが最も多く、ここからも生理休暇でなく有給休暇で対処しているという実態がわかります。
Data 4 : 生理休暇が法律で定められた権利であることを、働く女性の半数強は知らない

労働基準法の第68条には「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と定められており、取得させなかったときは、同第120条により30万円以下の罰金が科せられます。就業規則に記載がなくても、生理休暇は働く女性であればパートやアルバイトなどの非正規雇用者でも請求できる権利なのです。しかし、生理休暇の取得が法律で定められた権利であることを知っている働く女性は半数以下でした。こうした知識不足、そしてData 3で紹介した職場や周囲への遠慮が、生理休暇の取得率の低さを招いているようです。
Data 5 : 職場に「生理休暇がある」と回答した非正規社員は、正規社員の約半数

実際、勤務先にあるサポート・配慮について聞くと、正規社員では65.2%の人が「生理休暇」と答えていますが、非正規社員では33.2%と、ほぼ半数にとどまりました。この差は他の支援策に比較するとかなり大きく、法律で定められた権利にもかかわらず、すべての女性が生理休暇を取得できることを、周知されていない現状が明らかになっています。
-
飯田美穂先生のコメント
生理休暇は、会社の就業規則や従事する業務内容に関係なく、日本のすべての働く女性が取得することができます。そして、正規社員と非正規社員の待遇にも、格差があってはいけません。実際、生理の症状で救急搬送されるほど症状が重い方も存在しますが、一時しのぎの医療や市販の痛み止めを使った自己対処では、症状が繰り返されてしまうケースも多いです。痛み止めで効果が不十分な場合、低用量ピルなどのホルモン療法が効果的です。これらの治療を受けることで症状が軽くなり、生理休暇を取得しなくても働ける女性が増えることが期待されます。上司などに言いづらいという方は、病院を受診し、治療しながら働くための休暇ととらえてみてはいかがでしょうか。生理休暇を休養と治療のために前向きに使い、快適に働き続けるためのコンディションづくりに役立てていただきたいですね。また生理休暇を「働く女性の健康支援日」として、生理だけでなくPMSや更年期、婦人科検診などにも使えるよう、会社の就業規則や運用を変えるのもいいと思います。例えば健康診断の場合、男性は原則一つの病院で済みますが、女性は乳がん・子宮がん検診のために別の日に別の病院に行く必要があるなど、負担に差があるためです。