生理やPMS、更年期……職場における女性の健康課題を徹底調査(2)
Data 6 : 40代以上の働く女性の約半数に更年期症状による仕事への支障が

一方、更年期症状について40代以上の働く女性に聞いたところ「1日以上寝込み仕事ができない」と回答した人は4.4%、「横になって休憩したくなるほど仕事への支障をきたす」人は11.4%でした。合計すると、仕事を行えないほど症状が重い人は15.8%、45~49歳の場合は20.5%に及びます。また「仕事に若干の支障あり」という人は40代以上の働く女性で25.5%いたため、41.3%に更年期症状による仕事への影響があり、特に45~49歳では47.6%、50~54歳では49.8%と、ほぼ半数に支障が出ていることが明らかになりました。
Data 7 : 更年期症状に対して何らかの対処をして仕事をする人が約4割

しかし更年期症状で困っていても、仕事を休む人(「月に数回」と「年に数回程度」の合計)は18.9%で、2割弱でした。一番多かった回答は「薬を飲むなど何らかの対応をして仕事をする」(40.4%)で、4割の人が前向きに対応をして仕事をしていることがわかります。次いで多かったのは「特に何も対応はせず仕事をする」(35.9%)で、3割強の人は我慢をして、だましだまし仕事をしているようです。
Data 8 : 更年期症状がつらくて休んでも「更年期で」と言わない人が8割

いっぽう更年期症状で仕事を休んだという人に、上司や職場の人に理由を伝えたかを聞いたところ、「更年期症状という言葉は使わず症状(めまいがするなど)を伝えて休んだ」という人が68.8%で、「何も伝えず休んだ」という15.9%と合計すると、84.7%が更年期症状であることを伝えずに休んでいるとがわかりました。そのため、上司や同僚側は「うちの職場に更年期で悩んでいる人はいない」と思いこんでいる可能性もあります。更年期症状で困っていても休まない、休んでも理由を言わない女性が多いことで、職場の課題が表面化しないという側面があるようです。
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飯田美穂先生のコメント
閉経をはさんだ約10年間(45~55歳頃)の更年期に現れる症状のうち、仕事や日常生活に影響するほどひどい状態を「更年期障害」といいます。ただ、閉経年齢には個人差があり、自分が抱えている不調が更年期による症状なのか、別の原因なのか、あるいはただの不定愁訴なのか、さまざまな症状に思い悩む人も多いようです。実際、症状は多彩で100種類ほどあるとも言われており、他の病気によるものではないことを検査する必要があるため、診断が難しい・時間がかかる、という課題もあります。しかし、更年期障害は治療が可能です。漢方薬や、ホルモン補充療法(HRT)として塗る(ジェル)・貼る(パッチ)タイプなどがあり、必要に応じて、睡眠導入剤や抗不安薬など、症状に合わせた薬が処方されるなど、一人ひとりの症状に合わせた治療法を探していきます。我慢せずに気軽に婦人科で相談してみてはと思います。
Data 9 : 女性特有の健康課題により、3割の女性がキャリアアップを諦めている

こうした生理のつらい症状や更年期症状など、女性特有の健康課題によって「キャリアアップや仕事を引き受けることなどを諦めた経験がある」と答えた人は31.0%でした。前向きに仕事に取り組みたくても、周囲に悩みを言えず抱えたまま、諦めてしまっている女性が10人に3人はいるという結果です。これは働く女性自身のキャリア形成だけでなく、実は企業、そして社会全体にとっても大きな損失になっていると考えられます。
Data 10 : 「諦めた原因」は、生理痛やPMS、メンタルヘルスや更年期、不妊治療などさまざま

Data 8で、女性特有の健康課題により「キャリアアップや仕事を引き受けることなどを諦めた経験がある」と答えた人に、その原因について聞くと、最も多かったのは「生理痛」(32.0%)、僅差で「PMS(月経前症候群)」(31.0%)が続きました。PMSとは、生理前に一定期間だけあらわれる精神的/身体的症状で、情緒不安定やイライラ、眠気、集中力の低下、めまい、腹痛、頭痛、腰痛、むくみなどの症状があります。そして「メンタルヘルス」(28.5%)、「更年期症状」(25.2%)、「不妊治療・不育症治療・妊活」(20.9%)が続き、「女性のがん、女性に多いがん」は5.7%でした。女性のキャリア形成には、生理痛、PMS、妊活、そして更年期と、ライフステージごとにさまざまな阻害要因があり、長期的なケアが必要であることがわかります。