アンケート調査結果 Questionnaire

都内2000社と働く女性5424人が回答!「生理休暇」の現状と課題を徹底調査

[令和6年度アンケート前編]

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東京都では企業と従業員それぞれが、女性特有の健康課題に対する意識を高め、心身ともに健康に働き続けられる環境づくりを目指して、都内企業10,000社と働く女性10,000人を対象に調査を行い、2,000社の企業と5,424人の働く女性から回答を得ました。その結果、明らかになった現状や課題から、前編では生理休暇をテーマに紹介します。

調査概要
  • 「令和6年度働く女性のウェルネス向上事業アンケート調査」
  • 企業用アンケート:都内に本社又は事業所のある企業10,000社を対象に調査票を発送し、郵送又はWEBで回収。有効回答数は2,000。
  • 従業員用アンケート:都内の企業又は事業所に勤務する女性従業員(正規、非正規は問わない)10,000人を対象にWEBでアンケートを実施。有効回答数は5,424。
  • ともに調査期間:2024年6月3日~8月20日。

Data 1 : 本来はすべての企業にあるはずの「生理休暇」、「ある」と回答した企業は6割止まり

自社で行っているサポート制度・配慮は?という設問に対する棒グラフ。「生理休暇」61.7%、「セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの防止」42.0%、「産休・育休前後の女性社員のサポート」39.5%、「業務分担・人員配置の配慮」33.8%、「テレワーク、在宅勤務など勤務形態の配慮」32.6%、「費用補助制度」29.0%、「社内相談窓口の設置」17.9%、「従業員向けセミナー・研修など」10.4%、「サポート・配慮は行っていない」8.9%、「生理休暇以外で、女性の健康課題等を取得理由として使用できる休暇・休業制度」8.2%、「婦人科の受診支援(費用補助以外)」6.8%、「プレコンセプションケア(将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと)に関する支援」1.0%、「その他」2.0%、「わからない」2.3%、「無回答」0.2%。複数回答、n=2000

東京都内の2,000社に対して、女性特有の健康課題などについての自社のサポート制度や配慮について聞きました。生理休暇は労働基準法に定められた制度であり、本来はすべての職場にあるべきものですが、生理休暇があると回答した企業は61.7%でした。約4割の企業では、女性が生理の不快な症状で困っていても、そもそも生理休暇自体が存在しないかのような職場環境であることも考えられます。次いで「セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの防止」が42.0%、「産休・育休前後の女性社員のサポート」は39.5%でした。セクハラやマタハラは、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法により、企業が防止措置をとることが義務付けられていますが、半数以下にとどまっていました。女性特有の健康課題についてのサポート制度としては「生理休暇以外で、女性の健康課題等を取得理由として使用できる休暇・休業制度」が8.2%、「婦人科の受診支援」が6.8%と、いずれも1割以下という結果でした。

Data 2 : 働く女性側の認識はさらに低く、生理休暇が「ある」と回答した女性は3割

勤務先で行っているサポート制度・配慮は?という設問に対する棒グラフ。「生理休暇」33.5%、「テレワーク、在宅勤務など勤務形態の配慮」22.5%、「サポート・配慮は行っていない」21.1%、「産休・育休前後の女性社員のサポート」20.9%、「費用補助制度」20.0%、「セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの防止」16.9%、「従業員向けセミナー・研修など」11.6%、「社内相談窓口の設置」11.5%、「生理休暇以外で、女性の健康課題等を取得理由として使用できる休暇・休業制度」6.7 %、「婦人科の受診支援(費用補助以外)」5.2%、「プレコンセプションケア(将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと)に関する支援」1.5%、「低用量ピル・漢方薬などの服用支援」1.1%、「その他」0.1%、「わからない」22.2%。複数回答、n=5424

働く女性に対しても、女性特有の健康課題などに対する、現在の自社のサポート制度や配慮について聞きました。生理休暇があるという回答は33.5%で、企業調査の約半分という結果になりました。また「テレワーク、在宅勤務など勤務形態の配慮」は22.5%(企業調査では32.6%)、「産休・育休前後の女性社員のサポート」は20.9%(企業調査では39.5%)、「費用補助制度」は20.0%(企業調査では29.0%)と企業調査より下回っており、一方「サポート・配慮は行っていない」は21.1%と、企業調査の倍以上でした。回答した企業と働く女性が別の会社に属しているとしても、働く女性に対する制度の周知が不十分であるケースがありそうです。

Data 3 : 生理休暇は「従業員に利用されている制度・配慮」で最下位

過去1年間で従業員に利用されている制度・配慮は?という設問に対する棒グラフ。「費用補助制度」86.6%、「テレワーク・在宅勤務など勤務形態の配慮」82.5%、「業務分担・人員配置の配慮」70.5%、「従業員向けセミナー・研修など」64.4%、「婦人科の受診支援(費用補助以外)」57.8%、「産休・育休前後の女性社員のサポート」54.8%、「プレコンセプションケア(将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと)に関する支援」50.0%、「生理休暇以外で、女性の健康課題等を取得理由として使用できる休暇・休業制度」48.5%、「セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの防止」42.5%、「社内相談窓口の設置」39.8%、「生理休暇」34.9%。複数回答、n=1773、自社で行っているサポート制度・配慮の設問において「ない」「わからない」「無回答」とした企業を除いて集計

Data 1で、女性特有の健康課題などに対するサポート制度や配慮について回答した企業に対し、その中で過去1年間に従業員に利用されているものを聞き、利用率を集計したところ、最も利用されていたのは「費用補助制度」(86.6%)で、「テレワーク」(82.5%)、「業務分担の配慮」(70.5%)、「セミナー・研修」(64.4%)が続きました。選択肢の中で最も利用率が低かったのは「生理休暇」(34.9%)で、制度が「ある」とされていても利用されにくい、名ばかりの制度になってしまっている現状が浮かび上がります。

Data 4 : 生理休暇を取得している人は「いない」企業が約半数

過去1年間で生理休暇を取得した従業員数は?という設問に対する積み上げ棒グラフ。「1人」8.7%、「2人」3.8%、「3人」1.3%、「4人」0.8%、「5人」0.6%、「6人以上」1.3%、「いない」48.4%、「把握していない・わからない」35.2%、「無回答」0.1%。n=2000、生理休暇があると回答していない企業も含めて集計(生理休暇制度を整備していない企業であっても、本来は法律で生理休暇を取得できるため、すべての企業を集計対象とした)

企業に対し、実際に過去1年間で生理休暇を取得した従業員の人数を聞くと、「いない」という回答が約半数(48.4%)を占め、「把握していない・わからない」が35.2%でした。「6人以上」は1.3%のみで、「1人」(8.7%)から「6人以上」を合算しても16.5%にとどまり、生理休暇を取得する従業員はごくわずかであることが分かります。

Data 5 : 生理休暇を取得しない理由は、管理職は「多忙」、正規社員は「取得者が少ない」、非正規社員は「就業規則にない」

生理休暇を取得していない理由は?という設問に対する雇用形態ごとの回答を示した棒グラフ。項目によってばらつきがあるが、「申請するほどの症状ではない」が全体的にもっとも多く、次いで「取得している人が少ない・いない」が多い。9つの項目があり、それぞれに対して全体、経営者・役員(兼務役員も含む)、正規社員、非正規社員(パート・アルバイト、派遣、契約社員など)、個人事業主、休職・休業中の棒グラフがある。9つの項目は「取得している人が少ない・いない」「仕事が多忙」「雰囲気として取得しづらい」「上司や周りに言いづらい」「人員不足で休めない」「会社の就業規則(制度)にないから取得しづらい」「申請しても認められない」「申請するほどの症状ではない」「その他」

働く女性に「生理休暇を取得していない理由」を聞き、「雇用形態」とクロス集計したところ、「経営者・役員(兼務役員も含む)」では「仕事が多忙」が23.1%と「全体」(16.1%)を上回ったほか、「申請するほどの症状ではない」も43.6%で「全体」(34.7%)よりも多い傾向になりました。「正規社員」では「取得している人が少ない・いない」、「雰囲気として取得しづらい」、「上司や周りに言いづらい」、「仕事が多忙」がそれぞれ「全体」を上回っています。そして非正規社員は、生理休暇は法定の権利であるにもかかわらず「会社の就業規則(制度)にないから取得しづらい」、「申請しても認められない」という比率が高い傾向が見られ、同じ働く女性であっても立場によって、生理休暇を取得しづらい理由が異なることが明らかになりました。

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