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「生理休暇はずるい」? 女性の不調に向き合う職場をつくるために管理職が知っておきたいこと【マネジメント層のための健康相談室②】

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女性特有の不調に対してさまざまな支援策を行う企業が増えている一方で、「女性ばかりサポートするのはずるい」「どこまで支援すべきか分からない」など、疑問や不満の声も挙がっているようです。産業医であり、婦人科医として、多くの企業で研修やアドバイスを行ってきたイーク表参道 副院長の高尾美穂さんにアドバイスを聞きました。

「生理休暇はずるい」という声にどう向き合う? 理解しておきたい男女の違いと必要な視点

「男女平等の時代に、女性だけ生理休暇があるのはずるい」という声が若い男性従業員から出て、対応に困っています。

生物学的に、働く年代では男性より女性の方が生殖関連の機能に関する不調を抱える人が多い、というのは事実としてあります(下グラフ参照)。実際に、男性は50代前半頃まで、大きな困りごとがなく過ごしていける人が多いのです。一方女性は、若い年代から女性特有の症状や疾患の発症率が高く、それ以外にも妊娠・出産があったり、本来は男性も関わるべきですが、まだ多くを女性が担っている子育て・介護の負担もあります。女性は生物学的にも社会環境的にも、各年代で仕事を続けることへのハードルがあるのです。それを社会や職場の皆でサポートしようという考えや制度は、「女性だけずるい」というものではないはずです。男性が経験しない女性のみのハードルを、できるだけ取り除き、平らになった道を皆で進み、頑張れる人は高みを目指していこうという前向きな考え方やダイバーシティの視点を持っていただけることを願っています。

女性特有・男性特有の病気の総患者数(2020年、年齢階級別)を示す折れ線グラフで、左は女性(子宮筋腫、女性不妊症、子宮内膜症、乳房の悪性新生物、月経障害、甲状腺中毒症、閉経期およびその他の閉経周辺期障害)各年齢の推移、右は男性(前立腺の悪性新生物、その他の男性生殖器の悪性新生物、前立腺肥大・症、その他の男性生殖器の疾患)各年齢の推移を千人単位で比較している。
(出典:男女共同参画白書 令和6年版)

生理・PMS・更年期で休む女性はどのくらい? 欠勤と支援への考え方

人員配置を計算する上で、生理・PMS・更年期等で休む可能性がある女性は何%くらいと考えておけば妥当なのでしょう?

これは、企業の女性の健康課題に対する「取組のフェーズ」によって大きく異なってくると思います。研修や支援策などをしっかり行っている企業では、女性従業員それぞれが、自分の健康課題を「自分ごと」として捉え、治療などの対策を講じるケースが増えています。そうした企業であれば、不調を抱える女性がいても、実際に欠勤するほど症状が重くなる割合は1割程度と考えていいのではないでしょうか。一方、そこまで取組が進んでいない企業では、もっと欠勤が増えてしまう可能性が大きいでしょう。

欠勤するほど症状が重く、仕事でパフォーマンスが出せない状態というのは、会社と従業員の双方にとって幸せなことではありません。どうすれば能力を発揮できるようになるか、お互いに考えていくことが大事です。

快適な職場環境のために、どう調整する? ホットフラッシュと冷え性の女性で異なる要望

職場に「更年期で暑い」という女性と、「クーラーで冷えてつらい」という女性がいて困っています。どちらがより深刻(意見を優先すべき)なのでしょうか?

全館空調のオフィスでは、「寒すぎる」という声も「暑い」という声も上がり、温度設定が難しいですよね。私自身の診察室も、検査機器などのために室温を下げておかねばならず、夏でも足元にヒーターをつけることがあります。

かつての日本の職場は男性が多かったので、筋肉量が多く熱を産生する男性に合わせ、低めの温度に設定されることが多かったようですが、男女比が変われば希望も変わってくるので、どちらがより深刻かと考えるのではなく、一度、職場内で議論してみるといいと思います。

また暑がりの人は薄着をしたり服の素材を工夫する、小さな扇風機を使う、寒がりの人はカーディガンや膝掛け、小さなヒーターなどを準備するなど、ある程度は個人でも工夫できるので、職場もそれを認め、必要に応じてそれらのサポートを検討してもいいと思います。

生理休暇と低用量ピルの補助はどこまで必要?

女性従業員のためにオンラインピルの補助を始めたところ、サービスを利用した人たちは生理休暇の取得が減ったようです。しかし「ピルは嫌だ」と言う女性は休み続けるので、「会社が補助までしているのに治療せず、休むのはおかしい」という声も出ています。「治療促進」と「生理休暇の取得促進」の両方を推進するのはやりすぎ、という意見に対してはどのように考えればいいのでしょうか。

不調を改善する方法は低用量ピルだけではなく、漢方など他の方法もあり、低用量ピルは禁忌という人もいるので、企業が用意した補助制度を利用するかどうかは従業員の自由です。ただ、制度を使わなかった人が不調のまま休み続けてしまっているのであれば、ベースとなる教育啓発が足りていないのかもしれません。セミナーやEラーニングなどで、女性の健康についての正しい知識や対処法を学んでいれば、不調を放置して休み続けるのではなく、より良くなるためにどうしたらいいか、自分なりに考えて対処する人が増えると思います。

また、企業側も「制度を用意したら終わり、ではない」と意識してほしいです。治療の効果が出るにはある程度の時間が必要で、低用量ピルに慣れるために過渡期がある場合もあります。半休や時間休が取得しやすいなど、通院しやすい環境が整えられているか、フレキシブルな働き方ができるかどうかも重要なポイントです。

そして「生理休暇の取得促進はおかしい」という考え方も見直してほしいと思います。「体調が良くない時には休める」という会社の風土は、女性だけではなく男性にも必要です。つらい時に頼れる制度が機能していると考えれば、これは決して「女性のためだけ」ではない、ということに気づいてもらえるのではないでしょうか。

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高尾美穂さん
医学博士・産婦人科医 イーク表参道 副院長
日本スポーツ協会公認スポーツドクター・産業医

東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て、2013年から現職。専門は女性のヘルスケア。ヨガの指導者資格も持ち、女性の心身をさまざまな角度からサポートする。

(※内容は2025年8月取材時点のものです)